固定資産を売却した場合、固定資産台帳にて「除却」の登録をしたのち、振替伝票を入力して記帳します。また、有価証券などの固定資産台帳に登録していない資産の売却は、振替伝票の入力によって処理します。
個人事業主の場合、売却損益が譲渡所得にあたるかどうかを考慮する必要あります。
目次
- 固定資産を売却したとき
- 法人の場合
- 個人事業主の場合
- 有価証券を売却したとき
- 法人の場合
- 個人事業主の場合
固定資産を売却したとき
法人の場合
[決算]→[固定資産台帳]から資産を除却したのち、簿価と売却価額の差額を固定資産売却損益として認識するよう振替伝票を入力します。
1. [決算]→[固定資産台帳]を選択すると、固定資産の一覧が表示されます。 該当する資産をクリックしたのち、[除却]ボタンをクリックします。
2. 期首の帳簿価額で、除却仕訳を作成しない設定で除却します。
※ 除却日までの減価償却費を計上する処理もありますが、本ページで紹介する方法では省略しています。
3. 期首の帳簿価額と売却価額を元に[決算]→[振替伝票]から振替伝票を入力します。
【振替伝票での入力例:売却益が出る場合】
期首の簿価が80,000円の工具器具備品を130,000円で売却した。代金は、三井住友(法人)口座へ手数料500円(消費税率8%)を引いて入金された。
勘定科目 | 税区分 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
税込金額 | 税額 | 税込金額 | 税額 | ||
三井住友(法人) | 対象外 | 129,500 | 0 | - | - |
工具器具備品 | 対象外 | - | - | 80,000(=簿価) | 0 |
固定資産売却益 | 対象外 | 80,000(=簿価) | 0 | - | - |
固定資産売却益 | 課税売上8% | - | - | 130,000(=売却価額) | 9,630 |
支払手数料 | 課対仕入8% | 500 | 38 | - | - |
※ 売却価額に対して課税売上の税区分を適用するため、「固定資産売却益」を貸借両建てで入力しております。
【振替伝票での入力例:売却損が出る場合】
期首の簿価が80,000円の工具器具備品を60,000円で売却した。代金は、三井住友(法人)口座へ手数料500円(消費税率8%)を引いて入金された。
勘定科目 | 税区分 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
税込金額 | 税額 | 税込金額 | 税額 | ||
三井住友(法人) | 対象外 | 59,500 | 0 | - | - |
工具器具備品 | 対象外 | - | - | 80,000(=簿価) | 0 |
固定資産売却損 | 対象外 | 80,000(=簿価) | 0 | - | - |
固定資産売却損 | 課税売上8% | - | - | 60,000(=売却価額) | 4,444 |
支払手数料 | 課対仕入8% | 500 | 38 | - | - |
※ 売却価額に対して課税売上の税区分を適用するため、「固定資産売却益」を貸借両建てで入力しております。
※ 土地・借地権の売却であれば税区分は「非課売上」となります。
※ 固定資産を間接法で減価償却している場合は、固定資産勘定と減価償却累計額に分けて入力します。
個人事業主の場合
個人事業主が営業用自動車のような事業用固定資産を売却した場合、売却損や売却益は事業の支出や収入になりません。そのため「事業主貸」や「事業主借」で仕訳します。
また、売却益や売却損は、総合課税の譲渡所得に該当するため、所得税の確定申告書に直接記載します。
(譲渡所得の対象についての国税庁のページはこちら)
1. [確定申告]→[固定資産台帳]を選択すると、固定資産の一覧が表示されます。 該当する資産の「詳細」をクリックしたのち、[資産の除却]をクリックします。
2. 月割で減価償却させ、除却仕訳を作成しない設定で除却します。
3. 除却の仕訳を作成します。売却時の簿価は、期首残高から今期減価償却額を差し引いて求めます。
以下、「①売却のみ」、「②車両を売却して新車に買い替え(下取り)」の2つの場合について、freeeによる処理方法(a.自動で経理、b.取引登録、c.振替伝票)別に仕訳の作成例を紹介します。
①売却のみ
事例:売却時簿価が1,666,000円の車両運搬具を1,700,000円で売却した。
【①-a.自動で経理での入力例:同期している口座に入金がある場合】
- [取引]-[自動で経理]画面にて、該当の取引の詳細画面を開きます。
- 車両運搬具の除却の内容を入力します。この際、税区分の選択にご注意ください。
※ 「車両運搬具」の税区分:購入時に消費税を認識しているので「対象外」とします
※ 「事業主借」(売却価額)の税区分:売却価額にかかる消費税額を計上します。
【①-b.取引登録での入力例:事業主のプライベート口座に入金がある場合】
- [取引]-[取引の登録・一覧]画面で[詳細登録]をクリックします。
- 下図のように必要事項を入力します。この際、税区分の選択(変更)漏れがないよう注意します。
※ ここでは「プライベート資金」の収入取引として登録しています。
【①-c.振替伝票での入力例:同期していない登録口座に入金がある場合】
- [決算]-[振替伝票]画面で下図のように入力します。
②車両を売却して新車に買い替え(下取り)
事例:売却時簿価が1,666,000円の車両運搬具を1,000,000円で下取りに出すと同時に、新たに新車200万円を購入し、差額を決済した。リサイクル料金は、下取り車の分が10,000円で、購入分が15,000円だった。
【②-a.自動で経理での入力例:差額を同期しているクレジットカードで決済した場合】
- [取引]-[自動で経理]画面にて、該当の取引の詳細画面を開きます。
- 下図のように入力します。この際、消費税区分に注意します。
【②-b.取引の登録での入力例:差額を現金で決済した場合】
- [取引]-[取引の登録・一覧]画面で[詳細登録]をクリックします。
- 下図のように入力の上、[登録]します。この際、税区分の設定に注意します。
【②-c.振替伝票での入力例:差額を現金で決済した場合】
- [決算]-[振替伝票]画面で下図のように入力します。
※ 固定資産の売却分の消費税については、売却価格に対して課され、売却金額分の行に課税売上の税区分を入力することで反映させます。
※ 上記②-a,b,cそれぞれの場合において、新規購入の車両につき、固定資産台帳への登録も必要です。方法について詳しくはこちら
※ 譲渡所得に該当せず事業所得となる損益は、上記の例で、「事業主借」で処理している部分を「雑収入」「雑損失」で処理します。
譲渡所得に該当しない場合とは、以下の場合をいいます。
- 使用可能期間が1年未満の減価償却資産、取得価額が10万円未満である減価償却資産(業務の性質上基本的に重要なものを除きます。)
- 取得価額が20万円未満である減価償却資産で、取得の時に「一括償却資産の必要経費算入」の規定の適用を受けたもの(業務の性質上基本的に重要なものを除きます。)
有価証券を売却したとき
法人の場合
簿価と売却価額の差額を有価証券売却損益として認識するよう、[決算]→[振替伝票]から入力します。「有価譲渡」の税区分は、予め[設定]→[税区分の設定]から使用可能に設定しておきます。
【振替伝票での入力例:売却益が出る場合】
簿価100,000円の投資有価証券を150,000円で売却した。代金は、三井住友(法人)口座へ手数料500円(消費税率8%)を引いて入金された。
勘定科目 | 税区分 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
税込金額 | 税額 | 税込金額 | 税額 | ||
三井住友(法人) | 対象外 | 149,500 | 0 | - | - |
投資有価証券 | 対象外 | - | - | 100,000(=簿価) | 0 |
有価証券売却益 | 対象外 | 100,000(=簿価) | 0 | - | - |
有価証券売却益 | 有価譲渡 | - | - | 150,000 (=売却価額) | 0 |
支払手数料 | 課対仕入8% | 500 | 38 | - | - |
※ 売却価額に対して有価譲渡の税区分を適用するため、「有価証券売却益」を貸借両建てで入力しております。
【振替伝票での入力例:売却損が出る場合】
簿価100,000円の投資有価証券を70,000円で売却した。代金は、三井住友(法人)口座へ手数料500円(消費税率8%)を引いて入金された。
勘定科目 | 税区分 | 借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|---|---|
税込金額 | 税額 | 税込金額 | 税額 | ||
三井住友(法人) | 対象外 | 69,500 | 0 | - | - |
投資有価証券 | 対象外 | - | - | 100,000(=簿価) | 0 |
有価証券売却損 | 対象外 | 100,000(=簿価) | 0 | - | - |
有価証券売却損 | 有価譲渡 | - | - | 70,000 (=売却価額) | 0 |
支払手数料 | 課対仕入8% | 500 | 38 | - | - |
※ 売却価額に対して有価譲渡の税区分を適用するため、「有価証券売却損」を貸借両建てで入力しております。
なお、ゴルフ会員権の売却は、通常の有価証券の売却と異なり課税取引となります。税区分は課税売上とします。
個人事業主の場合
事業用としての有価証券の保有は認められず、私用の株式投資とみなされます。このため、事業用口座に入金があった場合は「事業主借」で処理します。売却による所得は譲渡所得として扱い、事業所得とは別途に申告することとなります。