目次
前受けと前払い
会計では、実際にお金の動きがあった日に売上を計上する、ということでは必ずしもありません。
基本的な考え方として、売上の計上はサービスを提供した時点で行います。
例えば、A「取引先に対して納品した後に請求書を出して、後日代金をもらう」こともあれば、B「先に代金を受け取って、後日完成した物を届ける」ということもあるでしょう。
Aでは売上の計上が先でお金は後から動き、Bではお金が先に動いて売上の計上が後に来ます。
費用の支払いに関しても、「商品と請求書を受け取って翌月払う」こともあれば、逆に「翌月分の利用料を前払いする」こともあるでしょう。
本ページでは、お金が先に動く場合の記帳方法について解説します。
お金が先に動いたとき(収入・支出)の取引登録
先にお金を受け取ったとき
サービスを提供する前に代金を受け取ったときは、一般的に「前受金」もしくは「前受収益」の勘定科目で、収入の取引として登録します。
「前受金」は商品の販売などサービスの提供が単発的なものである場合、「前受収益」は契約に従って継続的にサービスを提供していく場合に用います。
受け取った金額分のサービスをこれから提供する義務があり、場合によっては返金する可能性もあることから、会計上は「負債」の扱いになります。
この後の項では「前受金」を例に説明します。
売上の計上(前受金の振替)
先にお金を支払ったとき
何かの費用の代金を先に支払ったときは、一般的に「前払費用」もしくは「前渡金」の勘定科目で、支出の取引として登録します。
「前払費用」は家賃や保険料など契約に従って継続的にサービスの提供を受ける場合、「前渡金」は商品代金など単発的なサービスへの支払いである場合に用います。
前払費用や前渡金自体は、費用として計上されるのではなく、その金額分のサービスをこれから受けられる権利があることから、会計上は「資産」の扱いになります。
この後の項では「前払費用」を例に説明します。
費用の計上(前払費用の振替)
売上の計上(前受金の振替)
サービスを提供して売上を計上するタイミングが来たら、以前受け取っていた「前受金」を「売上高」に振り替えます。
登録してあった「前受金」の取引を振り替える方法は、取引の[+更新]と振替伝票の2通りあります。
取引を[+更新]する
- [取引]メニュー →[取引の一覧・登録]画面で、「前受金」として登録した取引を見つけてクリックします。
- 「前受金」の行にある[+更新]ボタンをクリックします。
- ウィンドウが開いたら、「更新日」欄に売上の計上日、「勘定科目」欄に「売上高」、「金額」欄には売上に振り替える金額を入力して[保存]します。
振替伝票を登録する
freeeを使い始める以前に受け取っていた前受金など、お金を受け取ったときの取引が登録されていない場合、または、複数の取引をまとめて振り替えたい場合は、[+更新]ではなく振替伝票を使います。
- [決算申告]メニュー →[振替伝票]を開きます。
- 「発生日:売上の計上日」「借方勘定科目:前受金」「貸方勘定科目:売上高」と入力し、任意で取引先などのタグも付けます。売上に振り替える金額は、借方・貸方どちらかに入力すると、もう片方にも反映されます。
費用の計上(前払費用の振替)
費用を計上するタイミングが来たら、以前支払っていた「前払費用」を費用の勘定科目に振り替えます。
支払ったときに登録した「前払費用」の取引を振り替える方法は、取引の[+更新]と振替伝票の2通りあります。
取引を[+更新]する
- [取引]メニュー →[取引の一覧・登録]画面で、「前払費用」として登録した取引を見つけてクリックします。
- 「前払費用」の行にある[+更新]ボタンをクリックします。
- ウィンドウが開いたら、「更新日」欄に費用の計上日、「勘定科目」欄に「地代家賃」など支払った内容に合う勘定科目、「金額」欄には振り替える金額を入力して[保存]します。
振替伝票を登録する
freeeを使い始める以前に支払った前払費用など、お金を支払ったときの取引が登録されていない場合、または、複数の取引をまとめて振り替えたい場合は、[+更新]ではなく振替伝票を使います。
- [決算申告]メニュー →[振替伝票]を開きます。
- 「発生日:費用の計上日」「借方勘定科目:地代家賃など費用の勘定科目」「貸方勘定科目:前払費用」と入力し、任意で取引先などのタグも付けます。費用に振り替える金額は、借方・貸方どちらかに入力すると、もう片方にも反映されます。
こんな前受け・前払いの場合はどうする?
ここまでは、前受け・前払いの基本的な登録についてご紹介してきました。
ここからは、実務に即した少し複雑な前受け・前払いの登録についてご紹介します。
一部を前受け・前払いした場合の登録
頭金や手付金として代金の一部だけを先に支払い、完成したときに残りを支払うケースもあります。
例えば、事務所設備の修理が必要になり、手付金として6/15に20万円を支払ったとします。
修理は7/10に行われ、代金は総額で50万円だったため、残りの30万円を即日支払ったとします。
6/15の支払い
勘定科目「前渡金」の支出の取引として登録します。
7/10の支払い
6/15が費用の全額だった場合には、前記「 費用の計上 」の手順で「修繕費」に振り替えますが、このケースでは一部だけを前払いしていて、残りの分を追加で支払っています。
「修繕費としてかかった総額50万円から、すでに支払っていた20万円を差し引いて、30万円支払った」と考えるとわかりやすくなります。
取引の詳細登録の画面で[+控除・マイナス行を追加]をクリックし、「修繕費 500,000円 - 前渡金 200,000円 = 合計 300,000円」となるよう複数行の支出取引を登録しましょう。
【7/10の支払い(一部を前受から振替、一部を当日現金払い)について手動で取引を登録する場合】
【7/10の支払い(一部を前受から振替、残りを当日現金払い)を自動で経理で取引を登録する場合】
上図の登録により、先に支払いをした際に生じた「前渡金」20万円の資産の残高が消え、「修繕費」50万円の費用が総額で計上されます。
売上のうち一部を「前受金」として受け取り、後日残り分を受け取った場合にも、上述の例と同様にマイナス行を使った複数行の収入取引として登録します。
一部を前受け・前払いした場合の登録(未決済取引を使用)
未決済取引は、基本的に「後でお金が動く取引」を記帳するために使いますが、口座以外の勘定科目で消し込むこともできます。
先にお金を受け取った・支払ったときは、ここまでと同様に取引を登録します。
上記「 一部を前受け・前払いした場合 」では、残りの分を支払ったときに「修繕費 500,000円 - 前渡金 200,000円 = 合計 300,000円」という複数行の取引を登録しました。
この代わりに、総額で「修繕費 500,000円」の未決済取引を登録し、「前渡金 200,000円」と「支払口座 300,000円」で消し込むことも可能です。
- 「発生日:費用の計上日」「勘定科目:修繕費など費用の勘定科目」「金額:費用としてかかった総額」と入力し、任意で取引先などのタグも付け、未決済取引として[支出を登録]します。
- 登録した未決済取引をクリックして開き、「決済」項目内にある[+更新]ボタンをクリックします。
※ 修繕費の金額欄の右にある[+更新]ボタンと間違えないように注意しましょう。
- 更新する行を選択するウィンドウが表示されたら、行の右にある[+更新]ボタンをクリックします。
- 「更新日:発生日と同じ日」「勘定科目:前渡金(前払いしたときの勘定科目)」「金額:前払いした金額」を入力し、右上の[保存]ボタンをクリックします。
このようにすると、総額のうち一部が決済された状態になります。
残りは手動で決済を登録するか、自動で経理から未決済取引の消込を行います。
複数回に分けて振り替える場合の登録(前受/前払入力アプリを使用)
火災保険料などのように、むこう2年分の費用を先に支払うケースもあります。
この場合、支払ったときに「前払費用」として取引を登録し、振替は複数回に分けて登録します。
振替は、期末に当期分を、または毎月末に当月分を、「保険料」など費用の勘定科目に振り替えます。
方法としては[+更新]か振替伝票を使って、全額ではなく一部ずつ、複数回に分けて振替を登録すれば問題ありません。
ただ、例えば2年分、計24回その処理を行うのは煩雑になってしまいます。
代わりにfreeeが提供する公式アプリ「 前受/前払入力アプリ 」を利用すると、複数回の[+更新]を一括で登録できます。
前受金・前払費用などの取引の登録と[+更新]を同時に行うことも、すでに登録されている取引に対して[+更新]を一括で登録することも、どちらも可能です。