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役員報酬・給与の取引の注意点
毎月支払う費用の代表として、役員報酬や従業員の給与、そして社会保険料があります。
本ページでは、これらを記帳する際に注意したいポイントと正しい記帳方法をご案内します。
ポイント1:1つの勘定科目で登録できない
多くの場合、役員報酬や従業員への給与を支払うときには、社会保険料や源泉所得税を差し引いて支給します。
そのため、「役員報酬」や「給料手当」という1つの勘定科目で取引を登録するのではなく、「役員報酬」や「給料手当」から社会保険料や源泉所得税を差し引いていることがわかるように複数の勘定科目を含む取引を登録します。
ポイント2:締め日に未決済取引を登録し、支払い日に消込する
給与は「月末締め・翌月10日払い」など締め日と支払い日が異なることが多く、また、社会保険料は翌月末に納付します。
そのため、給与の締め日を発生日として未決済取引を登録し、支払いをした日に消込を行う、という方法を採ります。
以下では、給与計算自体はできているものとして、取引の登録手順を説明します。
役員報酬の支払いの取引登録
「役員報酬の支払い」では、初期状態で用意されている取引テンプレートを用いて未決済取引を登録します。
- [取引]メニュー →[取引の一覧・登録]画面を開きます。
- 入力フォームの右上から「役員報酬」の取引テンプレートを選択します。
- 「役員報酬」のテンプレートでは、一般的な勘定科目と品目があらかじめ入力された状態になっています。該当項目の金額を入力することで、複数行の支出取引を簡単に登録できます。
1. 役員報酬
毎月同額で定めている役員報酬の金額を入力します。
※ 役員報酬は、原則として毎月同額で支払い、その金額は事業年度の開始から3ヶ月以内に決定している必要があります。年度の途中で自由に変えることはできません。2. 旅費交通費
通勤手当を支給している場合に入力します。不要な場合は、右端の[削除]ボタンで行を削除できます。3. 預り金(マイナス行)
厚生年金保険料の本人負担分として差し引く金額を入力します。未加入の場合には削除します。4. 預り金(マイナス行)
健康保険料の本人負担分として差し引く金額を入力します。未加入の場合には削除します。5. 預り金(マイナス行)
源泉徴収する金額を入力します。源泉徴収が不要な場合には削除します。6. 預り金(マイナス行)
他にも追加で支給している手当があれば[+行を追加]、控除しているものがあれば[+控除・マイナス行を追加]ボタンで行を追加し、合計金額が実際の支払額となるように入力します。
住民税の特別徴収として差し引く金額を入力します。徴収していない場合には削除します。
介護保険料の控除がある場合、健康保険料とまとめて問題ありませんが、マイナス行を追加して品目で区別してもよいでしょう。 - 「発生日」の欄に締め日を入力して、「決済:未決済」のまま未決済取引として登録します。
後日、支払いを行った日に未決済取引の消込をします。
(消込の手順については「 支払いをしたときの消込 」を参照してください。)
なお、役員が複数名いる場合、支払う対象1人につき1件の取引として登録してもかまいませんし、全員分の合計で1件の取引として登録してもかまいません。
また、締め日と支払い日が同じ場合は、「手順④」で「決済:完了」を選択し、出金元の口座を選択して登録します(ただし、銀行と同期して明細を取り込んでいる場合には「自動で経理」からの取引登録をおすすめします)。
自社用の取引テンプレートを登録すると便利です
役員報酬については、次回もほぼ同じ取引を登録することになるので、自社用の取引テンプレートを登録しておくと便利です。
今回登録した取引を開き、[取引テンプレートとして登録]ボタンから「役員報酬-佐々木」などのテンプレート名を付けて保存しておくと、次回からはあらかじめ金額なども入力されたテンプレートを使用できます。
役員報酬など金額が変わらないものについては金額をそのままに、毎月変わる手当などについては金額を「0」に編集しておくとよいでしょう。
給与の支払いの取引登録
「役員報酬の支払い」と同様、初期状態で用意されている取引テンプレートを用いて未決済取引を登録します。
- [取引]メニュー →[取引の一覧・登録]画面を開きます。
- 入力フォームの右上から「給与支払」の取引テンプレートを選択します。
- 「給与支払」のテンプレートでは、一般的な勘定科目と品目があらかじめ入力された状態になっています。該当項目の金額を入力することで、複数行の支出取引を簡単に登録できます。
1. 給料手当
控除前の給与の金額を入力します。2. 旅費交通費
通勤手当を支給している場合に入力します。不要な場合は、右端の[削除]ボタンで行を削除できます。3. 預り金(マイナス行)
厚生年金保険料の本人負担分として差し引く金額を入力します。未加入の場合には削除します。4. 預り金(マイナス行)
健康保険料の本人負担分として差し引く金額を入力します。未加入の場合には削除します。5. 立替金(マイナス行)
雇用保険料の本人負担分として差し引く金額を入力します。未加入の場合には削除します。6. 預り金(マイナス行)
源泉徴収する金額を入力します。源泉徴収が不要な場合には削除します。7. 預り金(マイナス行)
他にも追加で支給している手当があれば[+行を追加]、控除しているものがあれば[+控除・マイナス行を追加]ボタンで行を追加し、合計金額が実際の支払額となるように入力します。
住民税の特別徴収として差し引く金額を入力します。徴収していない場合には削除します。
介護保険料の控除がある場合、健康保険料とまとめて問題ありませんが、マイナス行を追加して品目で区別してもよいでしょう。
役員報酬と異なるのは、1行目が「給料手当」となっている点と、5行目に雇用保険料の本人負担分を差し引く「立替金」というマイナス行がある点のみです。
会社によっては、雇用保険料の控除についても「預り金」としている、または、社会保険料とともに「法定福利費」のマイナスとして計上しているところもあるかもしれません。
取引テンプレートはあくまで一般的な勘定科目を用いたサンプルですので、自社の処理に合わせて適宜編集するとよいでしょう。 - 「発生日」の欄に締め日を入力して、「決済:未決済」のまま未決済取引として登録します。
後日、支払いを行った日に消込をします。
(消込の手順については「 支払いをしたときの消込 」を参照してください。)
なお、従業員が複数名いる場合、支払う対象1人につき1件の取引として登録してもかまいませんし、全員分の合計で1件の取引として登録してもかまいません。
また、締め日と支払い日が同じ場合は、「手順④」で「決済:完了」を選択し、出金元の口座を選択して登録します(ただし、銀行と同期して明細を取り込んでいる場合には「自動で経理」からの取引登録をおすすめします)。
社会保険料の納付の取引登録
社会保険料は、会社と本人が折半で支払います。約半分を本人が負担し、残りを会社が負担して、納付は会社が行います。
本人の負担分は、役員報酬や給与から差し引いた「預り金」として、会社が一時的に預かっています。会社の負担分は、「法定福利費」という勘定科目を使うのが一般的です。
納付時には預り金と福利法定費の合計を支払うことになりますので、以下のような複数行の取引を登録します。
- [取引]メニュー →[取引の一覧・登録]画面を開きます。
- 社会保険料については取引テンプレートが用意されていませんので、初めて取引を登録する際は[詳細登録]ボタンをクリックして入力します。
- 「収支:支出」「決済:未決済」を選択し、次のように行を分けて入力します。
1. 法定福利費
厚生年金保険料の会社負担分の金額を入力します。2. 法定福利費
健康保険料の会社負担分の金額を入力します。3.法定福利費
子ども・子育て拠出金(会社が全額負担)の金額を入力します。4. 預り金
厚生年金保険料の本人負担分の金額(給与から差し引いた金額)を入力します。5. 預り金
健康保険料の本人負担分の金額(給与から差し引いた金額)を入力します。より簡易に「法定福利費」と「預り金」の2行でも問題ありませんが、ここでは給与支払いの取引と対応するように、保険料の種類によって細かく分けています。
給与支払いの取引と違い、「預り金」はマイナス行ではなくすべてプラスの行とする点に注意しましょう。 - 「発生日」の欄に給与の締め日を入力して、未決済取引として登録します。
翌月末に納付したら消込をします。
社会保険料の納付用の取引テンプレートを登録すると便利です
初回の社会保険料の納付時に登録した取引から自社用の取引テンプレートを登録しておくと、次回からの入力が簡単になります。
今回登録した取引を開き、[取引テンプレートとして登録]ボタンから「社会保険料納付」などのテンプレート名を付けて保存しておくと、次回からは金額と発生日を入力するだけで取引を登録できます。
役員報酬や給与を支払った・保険料を納付したときの消込
役員報酬や給与は本人に対して支払いをしたとき、社会保険料は納付をしたときに未決済取引を消込します。
現金や同期していない銀行口座から支払った場合
次の手順で、手動で消込をします。
- [取引の一覧・登録]画面で、消込をしたい未決済取引を見つけて開き、「決済」項目内の[+決済を登録]ボタンをクリックします。
- ウィンドウが開いたら、「出金元口座」を選択し、「決済日」に支払いをした日付を入力して、[登録]ボタンをクリックします。
同期している口座から支払った場合
「自動で経理」で消込をします。
- ホーム画面から、出金元口座のオレンジ色の数字をクリックして、「自動で経理」の画面を開きます。
- 支払いをしたときの明細と未決済取引の金額が一致していると、次のように消込が推測されますので、右の白背景部分で日付と金額をよく確認して、正しければ[登録]ボタンをクリックして消込は完了です。
推測が正しくない等、そのまま消込ができない場合は、[詳細]ボタンから適切に処理します。詳しい手順は「 4.4.3 未決済取引の消込をする(自動で経理) 」をご参照ください。
役員一名の会社などでは、役員報酬や社会保険料について別の月の分の消込をしてしまうミスがよく見られます。
例えば、締め日を月末としていて、社会保険料の引き落としが11月30日にあった場合、発生日が10月31日となっている未決済取引を消し込みます。
保険料以外の預り金(所得税や住民税)を納付したときの取引登録
役員報酬や給与から「預り金」として差し引いた金額は、文字通り「預かっているお金」で、後日それぞれの窓口に納付することになります。
所得税の源泉徴収分や住民税の特別徴収分については、原則として翌月10日までに納付します。
条件によっては特例の申請をすることで半年分まとめて納付も可能です。
いずれの場合でも、納付のスケジュールを確認して忘れずに納付しましょう。
納付したときは、消込ではなく、役員報酬や給与から差し引いたときと同じ勘定科目・品目で支出取引を登録します。
「預り金」として差し引くことで生じた残高は、納付時に「預り金」として支出することで解消されます。
例えば所得税の源泉徴収分を納付した際には、次のような取引を登録します。
- 収支:支出
- 決済:完了
- 口座:出金元口座
- 発生日:納付した日
- 勘定科目:預り金
- 品目:源泉所得税
※ 住民税を納付した際には、品目を「住民税」とします。
参考:給与の支払いが複数の明細に分かれる場合の消込
役員や従業員が複数名いる場合、個別に振込をすると、銀行口座の明細は人数分だけ発生します。
全員分の合計で1件の未決済取引を登録して、人数分の明細から消込をするとしても、人数が多くなるとかなりの手間がかかります。
この場合は、「 支払いをしたときの消込 - 現金や同期していない銀行口座から支払った場合 」と同様、取引を開いて手動で消込をしたうえで、銀行口座の明細は「無視」するのがおすすめです。
なお、銀行の給与振込(総合振込)サービスを利用すると、明細は1件にまとまります。振込の手間も減りますので、人数が増えてきたら総合振込の利用をおすすめします。
参考:社会保険料を全額「法定福利費」とする場合の会計処理
「社会保険料の納付」の項目で触れたように、社会保険料は会社と本人が折半で支払うものです。
言い換えると、納付した全額が会社の費用となるのではなく、会計処理も役員報酬や給与とセットで考える必要があります。
会社によっては、このページですでに紹介したやり方とは異なり、社会保険料の納付を全額「法定福利費」とする会計処理を採用している場合もあるでしょう。
この会計処理での一般的な対応として、社会保険料や雇用保険料に関して「預り金」や「立替金」の勘定科目を使わず、役員報酬や給与から差し引く際にも「法定福利費」の勘定科目を使います。
差し引く分はマイナスの法定福利費となるため、結果として計上される法定福利費の総額は同じになります。
- 役員報酬・給与支払いの取引
役員報酬や給与から控除する社会保険料の本人負担分は、「預り金」ではなく「法定福利費」として入力します。
【社会保険料の控除分を法定福利費とする場合の入力例】
※ 源泉所得税や住民税は会社の費用ではないため、これらの「預り金」まで「法定福利費」としないよう注意しましょう。
- 社会保険料納付の取引
社会保険料の納付は全額「法定福利費」として取引を登録します。
【全額を法定福利費とする場合の入力例】
この会計処理では保険料の預り金や立替金が生じることなく、仕訳も簡便な点がメリットです。会計担当者が複数名いる場合は、社内での方針を確認しておきましょう。