定期的なチェックと修正に役立つレポート
freeeでは「取引」「消込」「口座振替」「振替伝票」など、会計上の動きを記録するための入力タイプが複数あります。
また、手入力で行う以外に銀行やクレジットカードなどの明細をもとに取引を登録したり、請求書の発行や開始残高の設定をすることで取引が作成されたり、固定資産台帳から減価償却の仕訳が作成されたりと、登録方法も複数あります。
入力タイプや登録方法は異なっても、内部ではすべて複式簿記形式の仕訳に変換され、その仕訳をベースに集計された「試算表」や「総勘定元帳」などの会計帳簿を含む各種レポートで、いつでも最新の数字を確認できます。
日々の入力を正しくできているかどうか、チェックして必要な修正を行うために、レポートの基本的な見方とチェックポイントを知っておきましょう。
会計に慣れていない方はとくに、決算の時期になってから見返してまとめて修正しようとすると、非常に大変な思いをします。
はじめは見方の難しいレポートもあるかもしれませんが、定期的にチェックと修正の時間をとって、少しずつレポートの使い方に慣れていきましょう。
月次推移で損益計算書をチェックする
月次推移は、各勘定科目の合計金額(残高)を一覧表にした「損益計算書」と「貸借対照表」を、月別の金額の推移として見られるレポートです。
期間全体の累計で見るよりも、月ごとの数字を見ることで変動や異常箇所をつかみやすいため、損益計算書は月次推移で見るのがおすすめです。
①レポートの見方
[レポート]メニュー →[月次推移]を開きます。
月次推移の画面上部では、表示の絞り込みやエクスポート(データ出力)の操作が可能です。
その下方に表を切り替えるタブと、表の本体があります。
下図のように、縦方向に勘定科目が連なり、横方向に年月が並んでいます。
損益計算書では、売上高が一番上に、その下に売上原価、販売管理費と続きます。
さらに下には本業以外の活動で発生した営業外収益・費用などが続き、一番下に純利益が表示されます。
画面に収まらない部分は上下・左右方向にスクロールして確認します。
勘定科目をクリックすると、取引先別・品目別・部門別の内訳を確認できます(アドバンスプラン以上または旧プロフェッショナルプラン以上では、セグメント別も確認できます)。
この集計は、各タグは取引の登録時に付けたタグの分、「未選択」はタグの付いていなかった分を示しています。
月次推移を見るとき、損益計算書の集計は発生日に基づいている点に注意しましょう。
例えば、4月に納品して請求書を発行し、代金を6月に受け取った場合、その売上高は4月の数字として集計されているのが適切です。
また、会計期間の途中で見たとき、未来の日付の取引がないかぎり、翌月以降の損益計算書の金額は0となりますが、貸借対照表は資産や負債・純資産の残高を示すものですので、新たな増減がないかぎり今月と同じ金額となります。
②チェックポイント
損益計算書では、まず「地代家賃」や「水道光熱費」など毎月あまり変動しない費用の金額に異常なものがないか、他の月より明らかに突出した金額がないか確認してみましょう。
「役員報酬」は毎月同額になっているか、「給料手当」が毎月計上されているか、「法定福利費」はどうでしょうか。
次に、売上高や仕入高、その他の主要な費用について、発生しているはずなのに0になっている月や、二重に計上されている月がないか、抜けや重複がないか確認していきましょう。
また、減価償却が必要な固定資産を購入していたのに「消耗品費」としてそのまま費用計上していたことはなかったでしょうか。
固定資産は種類に合った勘定科目に変更し、固定資産台帳に登録して減価償却を行いましょう。
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損益計算書の確認例
下図の例では、3月の役員報酬が0となっていて、4月に倍の金額が載っています。
このように気になる箇所を見つけたら、金額部分をクリックして内訳を確認します。
金額部分をクリックすると、下図のように、画面右側に金額の内訳が表示されます。
さらに右端の「詳細」をクリックすると、元となっている取引などを開いて確認でき、必要があれば修正や削除も可能です。
この例では、3月分の役員報酬を4月15日に支払った際、誤って決済完了の取引を登録してしまっていたために、3月が0となり、4月が倍額となっていたようです。
重複計上を見つけた場合は一方を[削除]し、勘定科目やタグのミスがあった場合は修正して[保存]します。
今回の例のように、銀行の明細をそのまま取引登録するなど、入出金があった日付で売上や費用を計上していたために本来の計上月とズレていた場合には、発生日を修正するか、未決済取引の消込として処理しなおしましょう。
なお、内訳表示の下部に[+取引を追加する]ボタンがありますが、抜けがあった場合にはまず未処理の明細がないか確認しましょう。
その上で、必要であれば取引や口座振替の登録画面から追加します。
試算表で貸借対照表をチェックする
試算表は、各勘定科目の合計金額(残高)を一覧表にした「損益計算書」と「貸借対照表」を、期間全体の累計で見られるレポートです。
試算表を見るのが初めての方にとっては、経営成績を示す損益計算書よりも、その結果として会社の財産がどう変化したかを示す貸借対照表の方が難しく感じられるかもしれません。
そのような方には特に、貸借対照表は月次推移よりもシンプルな試算表で見ることをおすすめします。
①レポートの見方
[レポート]メニュー →[試算表]を開きます。
画面上部では、表示の絞り込みやエクスポート(データ出力)の操作が可能です。
その下方に表を切り替えるタブと、表の本体があります。
試算表の損益計算書では、月次推移と同様の絞り込みやタグ別表示が可能です。また、前期と今期の比較表示や、ひとり法人以上(または旧ベーシックプラン以上)では部門ごとの比較表示にも対応しています。
ここでは、タブを切り替えて貸借対照表を見てみます。
貸借対照表は、上から「資産の部」「負債の部」「純資産の部」に分かれています。
何も絞り込みをしない状態では、左側に期首(=今期のはじまりの時点)の残高、右側に期末(=今期の終わりの時点)の残高が表示されます。
期首の残高には、開始残高の設定で入力した残高か、年度締めをして繰り越された前期末の残高が反映されています。
期末の残高は、すでに期末を過ぎている場合は期末日時点の、まだ期の途中である場合は現時点の、freeeでの入力に基づいた残高となります。
期首と期末の間に表示される借方金額と貸方金額は、期間中に増えたり減ったりした金額を示しています。
仕訳上では、資産は借方(左側)に金額が入るときに増え、負債・純資産は貸方(右側)に金額が入るときに増えます。
なお、クレジットカード口座など負債の口座の残高は、「負債がある状態」のときにホーム画面ではマイナスで表示されますが、試算表や月次推移ではプラスで表示されます。
②チェックポイント
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期末の残高を確認する
試算表の貸借対照表では、まず期末の残高に注目して、現金や預金などの口座残高が実際の残高と一致しているかを確認しましょう(①)。
また、マイナス残高になっている資産や負債がないか見渡してみましょう。一部特別な勘定科目を除き、「マイナス残高はおかしい」と目を留めたいポイントです。
次に、「売掛金」や「未収入金」、「買掛金」や「未払金」など債権・債務の残高が正しいか、何の内容であるとわかっているか、内訳まできちんと確認しましょう(②)。
※ 一部特別な勘定科目:貸倒引当金、減価償却累計額、繰越利益剰余金など。
なお、すでに期末を過ぎている場合、実際にはお金の受け取りや支払いが済んでいても、期末時点で未収・未払いだったものは残高として載っているのが正しい状態です。
同じ要領で「預り金」や「立替金」、「長期借入金」「短期借入金」「役員借入金」なども確認していきます。 -
期首と期末の残高を比べる
期首と期末の残高を比べて見たとき、もし金額の変わっていないものがあったら、今期の間にその勘定科目について何も動きが起きていないことを意味しています(③)。よくある例は、債権・債務や固定資産のほか、「◯◯借入金」「商品」「前払費用」「前受金」などです。
「未払法人税等」「未払消費税等」など、前期末に確定した法人税や消費税が、実際には納付済みなのに未払いの状態で残っていないでしょうか。
固定資産や繰延資産も、減価償却をしていないと金額が変わらず、費用化されません。
これまでの入力内容を見直すときに気をつけたいポイント
会計のしくみとして、お金を預ったときと納付したとき、立て替えたときと精算を受けたとき、借りたときと返すとき、ともに同じ勘定科目を使って取引を登録することで、一旦増えた残高が減って解消されます。
例えば、誤った入金があったときに「仮受金」の勘定科目で収入取引を登録したのに、それを返したときに「仮払金」の勘定科目で支出取引を登録するなど、誤って別の勘定科目を使うと両方の残高が消えないまま残ってしまいます。
タグ別の内訳に関しては、適切に把握・管理できていれば十分ですので、「すべての取引にタグを付けて、取引先別や品目別の内訳を見るだけで不明なものがまったくない」という状態にまで整理する必要はありません。
ただし、内訳の残高が正しくなかったり、「未分類」の残高が大きすぎたりする場合は、金額部分をクリックしてタグの付け漏れや間違いを修正するとよいでしょう。