2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されました。
インボイス制度は免税事業者、課税事業者問わずすべての事業者に影響があり対応が必要です。
事業者のなかには、「インボイス制度が良く分からない」「対応は進めてきたが今の対応で十分なのか不安」といった方々もたくさんいらっしゃるようです。
本ページでは、インボイス制度の概要や用語、必要な対応などについて説明します。
本ページは令和5年9月時点の制度をもとに説明しています。10月以降に制度が変更されている可能性がありますので、国税庁などの情報も併せてご確認ください。
目次
インボイス制度について
インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、「正確な消費税計算の促進」を目的として、2023年10月から開始された制度です。
インボイス制度では「適格請求書(インボイス)」を売り手(適格請求書発行事業者)が買い手に発行し、買い手はインボイスを保存することで、消費税の仕入税額控除が適用されるようになります。
言い換えると、一部を除き原則として取引先から適格請求書を受領できなければ仕入税額控除は適用されません。
また、インボイス制度については2023年6月28日にfreee会計内のお知らせ欄に掲載した「インボイス制度パーフェクトガイド」で詳しく解説しています。インボイス制度について理解を深めるためにぜひご一読ください。
適格請求書(インボイス)とは
「適格請求書(インボイス)」とは、従来の区分記載請求書に下記の2項目を追加した請求書のことを指します。
- 税率ごとの消費税額及び適用税率
- 適格請求書発行事業者の登録番号
また、様式として請求書である必要は無く、請求書以外にも領収書やレシート、納品書なども必要な事項が記載されていれば「適格請求書」に該当します。
適格請求書発行事業者とは
適格請求書(インボイス)を発行できる事業者のことを「適格請求書発行事業者」といいます。インボイス制度施行日の2023年10月1日を登録日として適格請求書発行事業者になった事業者は約390万件(2023年8月末時点の申請ベース)になっており、すでに多くの事業者が登録を済ませています。
この適格請求書発行事業者の登録申請は2023年10月1日以降も受け付けていますので、これから適格請求書発行事業者になろうという事業者は以下の点に留意して登録申請を行ってください。
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適格請求書発行事業者の登録申請の概要
納税地を所轄する税務署長に対して「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出します。申請後は税務署の審査を経て適格請求書発行事業者登録簿に登録され、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」に掲載されます。
適格請求書発行事業者の登録申請はe-Tax又は書面によって行います。
書面を郵送する場合は、所轄の税務署ではなく各国税局のインボイス登録センターに送付することになりますのでご注意ください。
登録申請から登録番号の通知まで一定時間を要します。e-Taxの方がこの時間も短くなりますのでお勧めです。 -
免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請を行う場合
適格請求書発行事業者になれるのは課税事業者だけです。ただし、免税事業者が2023年10月1日から2029年9月30日までの日が含まれる課税期間(消費税の計算期間 個人:1月1日~12月31日、法人:事業年度)に登録を受ける場合は、「消費税課税事業者選択届出書」の提出は不要です。
この期間に登録を受ける場合は、適格請求書発行事業者の登録申請書に登録希望日(提出日から15日以降の事業者が登録を希望する日)を記載することで、その登録希望日から課税事業者となる経過措置が設けられています。
詳しくは、国税庁の「インボイス制度に関するQ&A 問7」をご確認ください。
また、免税事業者の届出などインボイス対応については「インボイス制度に対応するための届出から申告まで(免税事業者)」をご確認ください。 -
課税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請を行う場合
課税事業者が2023年10月1日以降に適格請求書発行事業者の登録申請を行う場合は、所轄の税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、税務署の審査を経て適格請求書発行事業者登録簿に登録された日から、適格請求書発行事業者となります。登録日以降、適格請求書を発行することができます。
課税事業者の届出などインボイス対応については「インボイス制度に対応するための届出から申告まで(課税事業者)」をご確認ください。
適格請求書発行事業者の登録申請が必要な事業者は早めに登録申請されることをお勧めします。
消費税の計算方法
免税事業者が適格請求書発行事業者になることで消費税の課税事業者となった場合、消費税申告までに消費税の計算方法を決める必要があります。
消費税の計算方法には一般課税と簡易課税(基準期間(※1)の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択できる消費税の計算方法)があります。
通常、簡易課税を選択する場合は、原則として課税期間が始まる前に所轄の税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
ただし、免税事業者の方が2023年10月1日から2029年9月30日までの日が含まれる課税期間に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合、登録日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を、所轄の税務署に提出した場合には、その課税期間の初日の前日に消費税簡易課税制度選択届出書を提出したものとみなされます。
また、2023年10月1日から2026年9月30日までの日が含まれる各課税期間に免税事業者が適格請求書発行事業者になることで消費税の課税事業者となった場合(※2)、売上税額の2割を納付税額とすることができる「2割特例」という計算方法が設けられています。この2割特例は、簡易課税のような届出は不要で、申告書に2割特例を適用する旨付記することで適用を受けることができます。
消費税の計算方法による納税額の違いについては「消費税納税額シミュレーション」をご利用ください。また、課税事業者が消費税の計算方法の変更を検討する場合は「消費税の計算方法を確認する」をご確認ください。
(※1)個人事業者は前々年の1月1日から12月31日、法人事業者は前々事業年度
(※2)課税事業者が適格請求書発行事業者になる場合でも、適格請求書発行事業者になった課税期間の翌課税期間以後の課税期間について、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合は2割特例の適用を受けることができます。
インボイス制度における必要な対応
インボイス制度では、インボイスを発行する側(売り手側)だけでなく、受け取る側(買い手側)も対応が必要になります。それぞれで必要になる対応が異なりますのでご注意ください。
これらの対応内容にはすでに対応されている事業者も多いと思いますが、現時点で「対応できている・いない」のチェックとして確認し、仮に対応できていない項目があれば早急に対策することをお勧めします。
また、2023年6月28日にfreee会計内のお知らせ欄に掲載した「インボイス制度・電帳法対応 実務ToDoガイドブック」の3ページ目にチェックリストがありますので、こちらを活用しながら準備を進めることをお勧めします。
インボイスを発行する側(売り手側)の対応
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適格請求書発行事業者の登録申請
インボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者の登録が必要になります。登録申請については、「適格請求書発行事業者の登録申請」をご確認ください。 -
要件を満たしたインボイスの交付
インボイスの要件を満たした請求書等の帳票を作成し、取引先に交付する必要があります。インボイスの要件については、本ページの「適格請求書(インボイス)とは」をご確認ください。 -
消費税の端数処理の見直し
1円未満の消費税額における端数処理について、インボイス制度の施行後は「税率ごとに合計した金額に税率を乗じて消費税額を算出する」というルールに沿って計算する必要があります。そのため、今まで明細行ごとに端数処理を行っていた場合は、計算方法の見直しが必要です。 -
複数書類のインボイス対応
納品書と請求書など、書類同士の相互の関連性が明確で取引内容を正確に認識できれば、これらの複数の書類を合わせて一つのインボイスとすることができます。
この場合、インボイスは「1インボイスあたり、税率ごとに1回の端数処理を行う」というルールがあるため、納品書で税額算出した場合の金額と、税抜金額合算後の請求書で税額算出した場合との金額のズレが発生してしまう点に注意が必要です。 -
インボイスの写しの保存
インボイス制度の施行後は、取引先に交付したインボイスの写しを原則として約7年間保存する必要があります。
freee会計上で保存する方法については、「取引先とやり取りした各種帳票類をファイルボックスで管理する(電子帳簿保存法)」をご確認ください。
インボイスを受け取る側(買い手側)の対応
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取引先への確認と管理
取引先が適格請求書発行事業者の登録申請をしていない場合は、その取引先からインボイスを受け取ることができません。
そのため、取引先が適格請求書発行事業者として登録されているか確認と管理が必要となります。 -
要件を満たしたインボイスの受領
取引先が発行するインボイスがインボイスの要件を満たしているか確認する必要があります。
また、受け取ったインボイスに記載漏れがあった場合、受け取った側が追記・修正を加えることはできません。発行元である取引先に誤りを訂正してもらい、正しいインボイスを再交付してもらう必要があります。 -
取引先が適格請求書発行事業者であるかの確認
受け取った書類が、仕入税額控除ができるインボイスであるか否かの判断基準として、取引先が適格請求書発行事業者であるかを確認する方法が確実です。
適格請求書発行事業者かどうかの判定は、取引先が発行する請求書等に記載された登録番号から国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認できます。 -
受領したインボイスの保存
原則として受け取ったインボイスは約7年間全て保存する必要があります。また、ECサイトなどのインターネット上での取引においても、インボイスをPDF等でダウンロードして保存する必要があります。
ただし、公共交通機関の運賃や自動販売機での購買ではインボイスの保存が不要となります。
また、基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者であれば、1万円未満の少額の課税仕入れについてもインボイスの保存が不要です。これらのインボイスの保存が不要のケースでも、下記の記載事項を満たした帳簿の保存は必要となります。 -
一定の事項を記載した帳簿の保存
仕入税額控除をするには、取引先から受け取ったインボイスを元に、日付・金額・取引先などの一定の事項を記帳する必要があります。 -
免税事業者等からの課税仕入れについての経過措置への対応
インボイス制度の開始から6年間は、免税事業者からの課税仕入れであっても部分的に仕入税額控除を受けられる経過措置が設けられています。
そのため、税区分・対象期間・控除割合に応じて記帳を行う必要があります。詳しくは、「消費税の仕入税額控除の経過措置について」をご確認ください。