外貨での取引は、発生時のレートで円貨に換算して記帳します。また、期末に残った外貨建て残高は期末レートで換算し直し、差額を為替差損益として計上します。
詳細については、企業会計審議会の外貨建取引等会計処理基準、日本公認会計士協会の外貨建取引等の会計処理に関する実務指針などを確認するか、税理士・会計士など専門家へお問い合わせ下さい。
本ページでご説明する会計処理は、freeeが提供する公式アプリ「外貨建取引管理アプリ」を利用することで行うことができます。ぜひfreee公式アプリをご利用ください。
外貨換算の考え方
1. 取引は発生時のレート、残高は期末レートで換算
外貨建ての売上・仕入、固定資産購入などがあれば、発生時のレートで換算します。期末に外貨建ての売掛金や買掛金、借入金などがあれば、期末レートで円換算しなおします。換算により発生した差額は、為替差損益として認識します。
所得税基本通達、法人税基本通達
レートの変化 | 影響 | 営業外損益の認識 | |
---|---|---|---|
輸出側(外貨資産) | 輸入側(外貨負債) | ||
円安方向 | 外貨資産・外貨負債が増加 | 為替差益、雑収入など |
為替差損、雑損失など |
円高方向 | 外貨資産・外貨負債が減少 |
為替差損、雑損失など |
為替差益、雑収入など |
為替差損益を計上する際は、「雑収入」や「雑損失」等の勘定科目が用いられます。ただし、為替差損益の金額が多額になる場合、「設定」→「勘定科目の設定」から「為替差損」、「為替差益」等の勘定を追加し、そちらを用いるようにします。
※ 勘定科目のカテゴリーは、個人事業主の場合「収入金額」または「経費」となります。
2. 用いるレート
原則として、利用している銀行が公表している、売上・仕入等を計上する日のTTM(仲値)レートを用います。
(メガバンクの公表例:MUFG、SMBC、みずほ)
月や四半期の平均レートを算出して、その月の取引について一括してそのレートを用いても差し支えありません。
ただし、一度定めた換算のルールは継続して適用する必要があります。
また、クレジットカード利用での外貨支払いについては、クレジット会社の適用したものを用いるなど、内容によって用いるレートを変えても差し支えありません。いずれも、次の2点が前提となります。
- なぜそのレートを用いるか合理的に説明できる
- 継続して適用する
取引の登録例
外貨ベースで発生した取引は発生時のレートで円換算して記帳します。
例:300ドルで備品を購入した。取引日のレートは 1USD=120.56 円だった。
換算後の数字(300 × 120.56 = 36,168 円)で取引を登録します。
例:期中に計上した100ドルの売掛金を2015年5月1日に回収した。売上計上時のレートは1USD=110円だったが、回収時のレートは1USD=100円だった。
元の取引に対して11,000円 総額の決済を登録したのち、別途次のような支出取引を登録します。
※ こちらは、外貨管理口座を用いていない場合の処理となります
例:保有していた3,000ドルを2015年9月1日に円転した。換算レートは 1USD=120 円、手数料は1500円だった。なお、当該の外貨は外貨預金口座では 375,000円(1USD=125 円)で記帳されていた。
入金口座への口座振替を登録します。
円転元の外貨預金の口座を決済口座として、為替差損益・手数料の取引を登録します。
残高の洗い替えの処理例
期末に外貨預金がある場合
予め外貨預金の口座を作っておき、外貨預金口座を決済口座として為替差損益を計上します。
例:1000ユーロを保有、1EUR=130.0円で換算していたが、期末レートは1EUR=123.5円であった。130,000円 → 123,500円
外貨預金を6,500円減額します。
期末に外貨建て債権がある場合
1. 振替伝票で処理する方法(件数が少ない場合にオススメです)
例:1000ドルの売掛金残高、1USD=108.3円で換算していたが、期末レートは1USD=114.0円であった。108,300円 → 114,000円
売掛金を5,700円増額します。
2. 外貨管理用口座を用いる方法(洗替の頻度・件数が多い場合にオススメです)
例:1000ドルの売掛金残高、1USD=108.3円で換算していたが、期末レートは1USD=114.0円であった。108,300円 → 114,000円
売掛金を5,700円増額します。
参考:外貨管理用口座の作成
外貨預金の口座は、同期を行わない口座として作成します。
また、決済条件が長い場合や外貨残高の洗替を毎月行っている場合、外貨を管理する債権・債務口座を作成して記帳することもできます。こちらは、洗替の処理・消込を簡単にするための方法となります。
※ 債権・債務の管理用口座を用いて記帳する場合、回収・支払の管理のために別途Excel等の台帳で取引先別残高を把握しておく事が必要です。
例:外貨預金口座を作成する
同期しない設定で貸借対照表上でその他預金と表示される口座を作成します。
- [口座]→[口座を登録]から、いずれかの銀行口座として新規に口座を作成します。
- 同期しないまま口座を作成します。(ゆうちょで作成した例)
同期の設定は行わないので、口座の登録は以上で完了です。 - freee会計ログイン後のトップページにて、画面左の口座一覧の表示から先ほど追加した口座の設定ボタンをクリックします。
- 管理しやすい名称に変更して保存すると、作業は完了です。
例:外貨売掛金口座を作成する
貸借対照表上で売掛金と表示される口座を作成します。
- [口座]→[口座を登録]にて、「その他決済口座を登録」から口座を作成します。
- 管理しやすい口座名称を入力します。
- freee会計ログイン後のトップページにて、画面左の口座一覧に先ほど追加した口座が表示されています。
- 初期設定では現金として決算書で表示されるため、[設定]→[勘定科目の設定]から、カテゴリーと表示名を変更します。これで設定は完了です。
例:外貨買掛金口座を作成する
同期しない設定で貸借対照表上で買掛金と表示される口座を作成します。
- [口座]→[口座を登録]で、「負債の口座(支払手形・借入金など)」をクリックして、新規に未払金扱いの口座を登録します。
- 口座名は、「外貨買掛金口座」等と設定します。
- 「設定」→「勘定科目の設定」から、決算書での表示名を買掛金に変更して保存します。
参考:個人事業主の場合の外貨取引について
基本的な考え方は法人の場合と変わらず、原則として売上・仕入等を計上する日のTTM(仲値)レート(主たる取引金融機関のもの)を用いて換算を行います。(所得税法基本通達 57の3―2)
一方で、引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で行われる預貯金の預入は外貨建取引とみなされないため、期末に外貨預金を期末レートで洗い替える必要はありません。(所得税法施行令 第百六十七条の六)