2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書保存方式)が導入されました。
インボイス制度は免税事業者、課税事業者問わずすべての事業者に影響があり、早めの準備・対応が必要です。
本ページでは、消費税の仕入税額控除の概要や要件などについて説明します。
インボイス制度については2023年6月28日にfreee会計内のお知らせ欄に掲載した「インボイス制度パーフェクトガイド」で詳しく解説しています。インボイス制度について理解を深めるためにぜひご一読ください。
※本ページは令和5年9月時点の制度をもとに説明しています。10月以降は制度が変更されている可能性がありますので、国税庁などの情報も併せてご確認ください。
消費税の仕入税額控除とは
課税事業者が納税する消費税額は、自社の売上時の消費税額(売上税額)から自社が仕入れなどにかかった消費税額を差し引いた分を納税します。この仕組みを「仕入税額控除」といいます。
ここでは、A社がB社から商品を仕入れて、消費者に販売するケースを例に説明します。
例:A社がB社から商品を11,000円(商品代金10,000円+消費税1,000円)で仕入れ、消費者に16,500円(商品代金15,000円+消費税1,500円)で販売した。
- A社がB社に支払った消費税:1,000円
- A社が消費者から預かった消費税:1,500円
上記の例の場合、納付する消費税の金額は以下の通りです。(一般課税を選択している場合)
- 1,500円(預かった消費税)- 1,000円(支払った消費税)= 500円
仕入税額控除の仕組みがなければ、A社が消費者から預かった1,500円と、B社から仕入れた際に支払った1,000円の計2,500円の消費税が国に納められ、消費者が負担した消費税額以上の金額が国庫に納まることになります。
このような生産や流通の各段階で二重三重に消費税が課されることがないように、課税売上の消費税額から課税仕入の消費税額を控除することで、税が累積しない仕組みが採用されています。
仕入税額控除の要件
インボイス制度導入後は、以下の記載事項を満たした書類を発行・保存した取引のみ、仕入税額控除の対象となります。
- 取引年月日
- 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
- 取引内容(軽減税率の対象である旨)
- 対価の額
インボイスが無くても仕入税額控除が受けられるケース
インボイス制度導入後は、基本的に適格請求書の発行・保存をしなければ仕入税額控除を受けることができません。しかし、以下のケースにおいてはインボイスが無くても仕入税額控除が可能です。
1.買い手が請求書などの交付を受けることが困難な取引の場合
インボイスを受け取る側(買い手)が、請求書などの交付を受けることが困難な取引の場合には、帳簿のみの保存でも仕入税額控除が認められます。具体的な取引は以下のとおりです。
※出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」
仕入税額控除が認められる取引 | |
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① | 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送 |
② | 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引 ※①に該当するものを除く |
③ | 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入 ※古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る |
④ | 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得 ※質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限る |
⑤ | 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入 ※宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る |
⑥ | 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品の購入 ※購入者の棚卸資産に該当するものに限る |
⑦ | 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等 |
⑧ |
適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス ※郵便ポストに差し出されたものに限る |
⑨ | 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当) |
なお、上記に該当するか否かについては税理士や税務署に確認のうえご判断ください。
2.仕入れに係る金額が1万円未満の場合
2023年10月1日から2029年9月30日までの間に国内で行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。
これを少額特例といい、対象事業者は基準期間における課税売上高が1億円以下または特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者です。
適格請求書発行事業者から仕入れ等を行った場合
インボイス制度導入後に適格請求書発行事業者から仕入れ等を行った場合、インボイスの保存などの要件を満たしている場合は仕入税額控除が適用できます。
そのため、「消費税の仕入税額控除とは」で記載したような計算方法で消費税の納税額を計算します。(一般課税を選択している場合)
免税事業者等から仕入れ等を行った場合
インボイス制度導入後に免税事業者等から仕入れ等を行った場合、仕入税額控除の要件を満たさないため、原則として仕入税額控除を受けることができません。
つまり、受け取った消費税から支払った消費税を控除できないため、預かった消費税をそのまま納付することになり、納付者の負担が増大します。
しかし、インボイス制度導入後から6年間は経過措置として、免税事業者等から仕入れを行った場合でも一定の割合で仕入税額控除を受けることができます。
詳しくは「消費税の仕入税額控除の経過措置について」をご確認ください。