freeeは2019年1月7日より、農業所得用の決算書の作成ができる機能の提供を開始します。本ページでは、同機能の操作方法について説明します。
※ 農業所得をお持ちの個人事業主の方の通期におけるfreeeの利用方法については「freee会計マニュアル【農業(個人事業主)の経理編:記帳】」のヘルプページをご覧ください。
目次
- freeeで作成が可能な農業所得用の決算書の種類について
- 農業所得用の決算書作成が可能なfreeeの料金プランについて
-
必要な情報を入力する
- 収穫前の果樹や生産前の家畜にかかった費用を入力しましょう
- 生産活動を始めた育成物は固定資産台帳に振替登録しましょう
- 貸倒引当金繰入額を入力しましょう -
決算書の作成方法
‐ 1. 専用機能にアクセスする
‐ 2. [準備ステップ] 勘定科目と決算書表示名の対応関係を設定する
‐ 3. [入力1ステップ] 追加で必要な情報を入力する
‐ 4. [入力2ステップ] 追加で必要な情報を入力する
‐ 5. [確認ステップ] 農業向けの決算書を発行する - 申告書類を提出する
freeeで作成が可能な農業所得用の決算書の種類について
確定申告の提出方法と申告書類は以下の4種類あり、それぞれ記帳方法など行う作業が異なります。詳細は「確定申告とは」をご確認ください。
申告種別 | 特別控除額 | 提出書類 | 申告方法 |
---|---|---|---|
青色申告 | 65万円 | 青色申告決算書(貸借対照表、損益計算書) | e-Tax |
青色申告 | 55万円 | 青色申告決算書(貸借対照表、損益計算書) | e-Tax または 紙で提出 |
青色申告 | 10万円 | 青色申告決算書(損益計算書のみ) | e-Tax または 紙で提出 |
白色申告 | なし | 収支内訳書 | e-Tax または 紙で提出 |
農業の確定申告においては「確定申告書」という書類と、上記の内いずれかの書類を合わせて作成・提出する必要があります。農業以外の事業所得や不動産所得を得ている場合には、所得ごとに青色申告決算書(もしくは収支内訳書)を切り分けて作成します。
(確定申告書は事業主全体の所得をまとめて表記したものであるため、農業以外の所得を得ている場合も1つ作成するだけで大丈夫です。)
農業所得と合わせて不動産所得を得ている場合には、2つの所得毎に青色申告決算書(もしくは収支内訳書)の作成が可能です。一方で、農業以外の事業所得を得ている場合、現状の機能では所得を切り分けることができないため、freeeでは書類の作成に対応できません。
freee会計では青色申告特別控除額が65万円の農業所得用の青色申告決算書を出力できません。お手数ですが、e-Taxで申告する際に「青色申告特別控除額」の項目に650,000円とご入力のうえ申告を行ってください。
詳しくは、国税庁「確定申告書等作成コーナーよくある質問」の「青色申告特別控除の金額がある場合」をご確認ください。
◯農業所得以外に得ている所得に応じたfreeeの機能対応表(フローチャート)
上図のフローチャートを表にまとめたものが次のとおりです。
番号 | 設問 | 「はい」の場合 | 「いいえ」の場合 |
---|---|---|---|
設問1 | 農業以外の所得を得ていますか? | 設問2へ | freeeで対応可能 |
設問2 | 農業以外の事業所得を得ていますか? | freeeで対応不可 | 設問3へ |
設問3 | 不動産所得を得ていますか? | freeeで対応可能 | freeeで対応可能 |
農業所得用の決算書作成が可能なfreeeの料金プランについて
freeeの個人事業主向けの有料プランには「スターター」「スタンダード」「プレミアム」の3つがあります。農業所得用の決算書作成機能は「スタンダード」「プレミアム」のプランが対象となります。各プランの詳細については「【個人】freee会計のプランについて」をご確認ください。
※1:農業所得用の決算書作成機能においては電子申告は利用することができません。書類を印刷の上、税務署への直接提出や郵送などで申告の申請を行ってください。
※2:本機能に関してはエンドユーザー様向けとなっており、freee会計でご利用が可能です。freee申告でも農業用の決算書・収支内訳書の作成は可能ですので、会計事務所様はそちらをご利用ください。
必要な情報を入力する
freee会計の[確定申告]メニュー → [確定申告書類の作成]を開き、[収支]ステップにて通常の項目に加えて農業の確定申告に必要な情報を入力します。
通常の項目の入力については「【個人】確定申告書類の作成」をご覧ください。
収穫前の果樹や生産前の家畜にかかった費用を入力しましょう
freee会計の[確定申告]メニュー → [振替伝票]を開き、年度末時点で育成中の果樹・家畜にかかった肥料費・飼料費などの総計を「育成仮勘定」に振り替えます。
例:年度末時点で育成中の果樹・家畜にかかった肥料費・飼料費などの総計が500,000円となった場合
借方に「育成仮勘定」を、貸方に「育成費振替高」を入力します。
生産活動を始めた育成物は固定資産台帳に振替登録しましょう
freee会計の[確定申告]メニュー → [振替伝票]を開き、成熟までに要した肥料費・飼料費などの総計を「育成仮勘定」から「生物」に振り替えます。
「生物」に振り替えた後に、freee会計の「確定申告」メニュー → [固定資産台帳]を開き、固定資産台帳に生物を登録します。登録方法については「【個人】固定資産を登録する(固定資産台帳)」をご覧ください。
例:成熟までに要した肥料費・飼料費などの総計が500,000円となった場合
借方に「生物」を、貸方に「育成仮勘定」を入力します。
貸倒引当金繰入額を入力しましょう
売掛金や貸付金など貸金の貸し倒れによる損失が生じた場合は、[直接入力編集へ]ボタンをクリックし、貸倒引当金へ繰り入れた金額を入力します。貸倒引当金繰入額については「【個人】貸倒引当金繰入額の計算を行う」をご覧ください。
決算書の作成方法
1. 専用機能にアクセスする
農業所得用の青色申告決算書(収支内訳書)は、freee会計の専用機能で作成します。freee会計の「確定申告」メニュー → 「確定申告書類の作成」を開き、[基本]ステップの「一番近いと思われる業種」で「農業」を選択します。
「農業用決算書作成モードに切り替えますか?」で「切り替える」にチェックを入れることで専用機能を利用できるようになります。
その後、案内に沿って書類の作成に必要な情報を入力します。
農業所得用の確定申告では、追加的に登録が必要な情報があります。そのため、[確認]ステップの[決算書を作成]から専用の機能にアクセスして、農業用の決算書(収支内訳書)を作成します。
2. [準備ステップ] 勘定科目と決算書表示名の対応関係を設定する
専用機能の「準備」ステップでは、勘定科目と決算書表記名の対応関係の紐づけを行います。
農業所得用の決算書(収支内訳書)は、それ以外の所得とは異なった表記名を用いています(例:種苗費、農具費など)。そのため、freeeで入力した取引の勘定科目が、農業用決算書(収支内訳書)のどの表記名に反映されるのかを設定することになります。
決算書(収支内訳書)の様式に記載がない反映先を新たに設ける場合には、「その他経費」「その他資産」「その他負債」などを選択します。新規の表記名をご自身で作成し、反映先として設定することができます。
3. [入力1ステップ] 追加で必要な情報を入力する
専用機能の「入力」ステップでは、農業の確定申告に追加で必要な情報を入力します。
収入の内訳
農業で得た収入は、作物の種類ごとに内訳を記載します。また、種類ごとに作付面積や収穫量(畜産の場合は頭数)を入力する他、家事消費や期首・期末に農産物の棚卸残高がある場合は、その内訳も記載します。
作物の種類は以下の4つに分類されます。
分類 | 内容 |
---|---|
田畑(果樹以外) | 果樹以外の露地作物 |
田畑(果樹) | 果樹(露地作物) |
特殊施設 | 施設栽培の作物 |
畜産物その他 | 畜産物や、上記分類に当てはまらないもの |
[収入の内訳を入力しましょう]をクリックし、栽培している作物ごとに必要な情報を入力します。必要に応じて[行を追加]から入力欄を追加して入力します。不要な行は右側の[ー]をクリックすることで削除ができます。
決算書表示名の各項目と金額が一致していることを確認し、[保存]をクリックします。
雑収入の内訳
※「雑収入」の金額が0円の場合、本セクションは表示されません。
雑収入を得ている場合は、収入の種類ごとにその内訳を記載します。
必要に応じて[行を追加]から入力欄を追加して入力します。不要な行は右側の[ー]をクリックすることで削除ができます。
決算書表示名の各項目と金額が一致していることを確認し、[保存]をクリックします。
農産物以外の棚卸高の内訳
未収穫の農産物・肥育中の肉用牛・未利用の資材などを年度末に保有している場合は、その数量と金額の内訳を記載します。
該当する棚卸資産は以下の4つに分類されます。
分類 | 内容 | freeeに登録される勘定科目の例 |
---|---|---|
未収穫農産物 | 栽培中や未収穫の状態の農産物 | 仕掛品 |
販売用動物 | 販売目的で飼育中の動物 | 仕掛品 |
資材・肥料 | 生産目的で消費される資材(種子・肥料・飼料・農薬・冷凍精液など) | 原材料 |
その他 | 上記分類に当てはまらないもの |
[収穫が済んだ農産物以外の棚卸高の内訳を入力しましょう]をクリックし、必要な情報を入力します。必要に応じて[行を追加]から入力欄を追加して入力します。不要な行は右側の[ー]をクリックすることで削除ができます。
決算書表示名の各項目と金額が一致していることを確認し、[保存]をクリックします。
雇人費の内訳
※「雇人費」の金額が0円の場合、本セクションは表示されません。
専従者以外の従業員に支払った給与・手当がある場合は、支払先の情報や勤務日数を記載します。
[雇人費の内訳を入力しましょう]をクリックし、必要な情報を入力します。2名以上雇入費を支払った場合は、[行を追加]から入力欄を追加して入力します。不要な行は右側の[ー]をクリックすることで削除ができます。
決算書表示名の各項目と金額が一致していることを確認し、[保存]をクリックします。
[収穫が済んだ農産物以外の棚卸高の内訳を入力しましょう]まで入力が完了したら、画面下の[次へ]をクリックします。
4. [入力2ステップ] 追加で必要な情報を入力する
[入力1]ステップに続き、[入力2]ステップでも農業の確定申告に追加で必要な情報を入力します。
育成費用の内訳
※「経費から差し引く果樹牛馬等の育成費用」の金額が0円の場合、本セクションは表示されません。
育成期間中の果樹・搾乳牛・繁殖豚などを保有している場合は、その作物・畜産物の種類ごとに内訳を記載します。
果樹・搾乳牛・繁殖豚など、それ自体が生産活動を行う作物・畜産物は「生物」という勘定科目を用いて、固定資産として扱います(育成期間中は「育成仮勘定」という勘定科目で管理します)。
freeeでの「生物」「育成仮勘定」の管理・操作方法は「freee会計マニュアル【農業(個人事業主)の経理編:記帳】 - 5. 生物の固定資産管理について(果樹・搾乳牛・繁殖豚など)」をご覧ください。
[育成費用の内訳を入力しましょう]をクリックし、該当する作物・畜産物の名称や取得年月日の他、その育成にかかった今年度の費用を入力します。入力項目が2種類以上ある場合は、[行を追加]から入力欄を追加して入力します。不要な行は右側の[ー]をクリックすることで削除ができます。
決算書表示名の各項目と金額が一致していることを確認し、[保存]をクリックします。
地代(小作料)・賃借料の内訳
※「地代・賃借料」の金額が0円の場合、本セクションは表示されません。
農作業の外部委託にかかった費用や共同施設の利用料・農地の賃借料などが生じた場合は、その種類ごとに内訳を記載します。
決算書表示名の各項目と金額が一致していることを確認し、[保存]をクリックします。
利子割引料の内訳
借入金の支払利息などが発生している場合は、その種類ごとに内訳を記載します。
肉用牛の特例の適用金額
肉用牛の売却にあたって、課税の特例措置を受ける場合には該当金額を入力します。対象の方は、決算書に記載の所得金額から適用金額を差し引いた値を、確定申告書の所得金額に記載します。お手元で金額を計算の上、個別に確定申告書を修正ください。
詳しくは、国税庁の「肉用牛の売却に係る課税の特例について」をご確認ください。
「肉用牛の特例を受ける金額」欄に金額を入力したら、[保存]をクリックします。
特殊事情の記載
税務署などに報告されたい今年度の特殊事情があれば、入力します。
(例:売上や利益に大きな増減があった場合、その事情について記載することで予め税務署への説明を行っておく、など)
5. [確認ステップ] 農業向けの決算書を発行する
専用機能の[確認]ステップで、作成した農業用の決算書を発行します。
「決算書を印刷しましょう」欄の「提出日」を入力し、[PDFファイルをダウンロード]をクリックします。※「出力済み申告書一覧」から過去に出力した申告書をダウンロードできます。
PDFファイルをダウンロードした後に[freee会計に戻る]をクリックし、[確認]ステップに戻ります。
「②決算書以外の書類の内容を確認しましょう」欄の[書類をPDFで出力する]をクリックし、農業所得用の決算書以外の書類を出力します。
※[確認]ステップの「1.農業用の決算書以外の申告書を印刷しましょう」でもダウンロードが可能です。
なお、修正が必要な項目がある場合は「直接入力編集へ」から修正を行います。
書類をダウンロードした後に、[農業向けの対応が終わったので提出ステップに進む]をクリックします。
申告書類を提出する
[提出]ステップでは、[確認]ステップで作成した農業用の決算書を印刷し、税務署に郵送または持参して提出します。
- 「1.農業用の決算書以外の申告書を印刷しましょう」欄の「提出日」を入力し、[PDFファイルをダウンロード]をクリックします。
※[確認]ステップでダウンロード済みの場合はこの作業は不要です。
- 印刷した申告書に申告書に個人番号(マイナンバー)を記入します。マイナンバーの記入箇所については「確定申告書類を税務署に持参・送付して提出する」をご覧ください。
- 各種控除の内容を証明するための書類等を用意します。マイナンバーの提出書類については国税庁のサイト「番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い」をご覧ください。
- 「4.申告書類一式を普通郵便で送りましょう」で示されているとおりに、申告書類・添付書類・返信用封筒・切手を、角形2号の封筒に入れます。
- 「5.納税をしましょう」ステップで表示された納税額を、選択した方法で納付します。
以上で確定申告の作業は完了です。申告手続きが完了したら、[次へ進む]ボタンをクリックし、案内に沿って年度締めなどを行ってください。