このページでは、主に補助金等を用いて固定資産を購入した場合における、圧縮記帳(税務上の規定)の概要とfreeeでの登録方法について説明します。
目次
-
圧縮記帳の概要
- 圧縮記帳とは
- 圧縮記帳の必要性
- 圧縮記帳の記帳方法 -
freeeで圧縮記帳を行う際のステップを確認する
- 法人の方
- 個人事業主の方 -
freeeで圧縮記帳を行う(法人の場合)
- 1. 不足している決算書表示名・勘定科目を登録する
- 2. 補助金受領時の取引を登録する
- 3. 固定資産取得時の取引を登録する
- 4. 取得した固定資産に対する圧縮損を計上する
- 5. 圧縮した固定資産を固定資産台帳へ登録する -
freeeで圧縮記帳を行う(個人事業主の場合)
- 1. 補助金受領時の取引を登録する
- 2. 固定資産取得時の取引を登録する
- 3. 取得した固定資産に対する圧縮損を計上する
- 4. 圧縮した固定資産を固定資産台帳へ登録する - ご注意
圧縮記帳の概要
圧縮記帳とは
圧縮記帳とは税法上の規定であり、有形固定資産の取得に際して補助金等の収益が発生した場合に、その取得価額を減額(圧縮)することにより圧縮損を計上し、収益金額と圧縮損とを相殺してその年度の税負担を軽減する効果をもたせるものです。
圧縮記帳の必要性
次のモデルケースを例にご説明します。
【モデルケース】機械装置を補助金と自己資金で購入する場合
- 機械装置の取得
- 取得日:X1年4月1日(期首)
- 取得価額:10,000千円
- 国庫補助金の受領
- 受領日:機械装置の取得日と同日
- 補助金額:5,000千円
- 税法上の圧縮限度額:5,000千円
- 機械装置の減価償却
- 耐用年数:5年
- 残存価額:ゼロ円
- 償却方法:定額法
- 経常的な毎年の収益:1会計年度あたり2,500千円
- 法定実効税率:30%
- 経理方式:税込経理
※ 便宜上、その他の条件については考慮しない。
(一部、内容説明のため条件を簡略化している部分があります)
[圧縮記帳を行わない場合]
例えば上記モデルケースの場合、X1年度に補助金5,000千円を受け入れています。しかし、補助金にも法人税等が課されるため、初年度には1,500千円(5,000千円×30%)分多く税金を支払わなければなりません。
結果的に、大きな投資(固定資産の購入)のために受け入れた補助金であるにもかかわらず、初年度からその多くが社外へ流出してしまい、補助金の効果が薄れてしまう事態が発生します。
(単位:千円) | X1年度末 | X2年度末 | X3年度末 | X4年度末 | X5年度末 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
収益 |
5,000 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5,000 |
収益 (経常的な収益) |
2,500 | 2,500 | 2,500 | 2,500 | 2,500 | 12,500 |
費用 (減価償却費) |
△2,000 | △2,000 | △2,000 | △2,000 | △2,000 | △10,000 |
課税所得 | 5,500 | 500 | 500 | 500 | 500 | 7,500 |
課税額 | 1,650 | 150 | 150 | 150 | 150 | 2,250 |
[圧縮記帳を行う場合] ※ 直接減額方式(詳細は後述)を採用した場合
X1年度(補助金受領年度)に補助金を受領したとき、補助金と同額の「圧縮損」を計上することによって、当該補助金に対する課税を将来に繰り延べることができるようになります。
これにより、補助金受領年度1年度目から補助金の効果を受けられるようになります。
(単位:千円) | X1年度末 | X2年度末 | X3年度末 | X4年度末 | X5年度末 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
収益 (補助金収入) |
5,000 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5,000 |
収益 (経常的な収益) |
2,500 | 2,500 | 2,500 | 2,500 | 2,500 | 12,500 |
費用 (減価償却費) |
△1,000 | △1,000 | △1,000 | △1,000 | △1,000 | △5,000 |
費用 (圧縮損) |
△5,000 | 0 | 0 | 0 | 0 | △5,000 |
課税所得 | 1,500 | 1,500 | 1,500 | 1,500 | 1,500 | 7,500 |
課税額 | 450 | 450 | 450 | 450 | 450 | 2,250 |
以上の表のように、圧縮記帳を行わない場合は初年度のみ極端に高い税額となりますが、圧縮記帳を行う場合は税額が期間に渡って均一化されます。ただし、あくまで課税を将来に繰り延べる会計処理であるため、税額そのものの支払いが軽減されるものではないところに注意が必要です。
圧縮記帳の記帳方法
圧縮記帳には次のいずれかの方法で会計処理を行います。どちらを選択しても結果的には同じとなります。
- 直接減額方式:損金経理により帳簿価額を直接減額する方法
- 積立金方式:確定決算または決算確定の日までに剰余金の処分により圧縮積立金を積み立てる方法
次のセクション以降では、「直接減額方式」を選択した場合におけるfreeeでの登録方法をご説明します。
freeeで圧縮記帳を行う際のステップを確認する
法人の方
法人の方は、次の5ステップに沿って圧縮記帳を行います。
各ステップの詳細については「freeeで圧縮記帳を行う(法人の場合)」をご覧ください。
順番 | ステップ | ステップの詳細 |
---|---|---|
1 | 不足している決算書表示名・勘定科目を登録する |
固定資産の圧縮記帳を行う上で、必要な決算書表示名・勘定科目を登録します。
|
2 | 補助金受領時の取引を登録する | 補助金受領時の取引を登録します。 補助金受領時の取引登録では、ステップ1で登録した「国庫補助金収入」勘定を用います。 |
3 | 固定資産取得時の取引を登録する | 固定資産取得時の取引を登録します。 |
4 | 取得した固定資産に対する圧縮損を計上する | 取得した固定資産に対して、圧縮損を計上します。 ここでは、ステップ1で登録した「固定資産圧縮損」勘定を用います。 |
5 | 圧縮した固定資産を固定資産台帳へ登録する | ステップ4で圧縮損計上後の固定資産を、固定資産台帳へ登録します。 |
個人事業主の方
個人事業主の方は、次の4ステップに沿って圧縮記帳を行います。
各ステップの詳細については「freeeで圧縮記帳を行う(個人事業主の場合)」をご覧ください。
順番 | ステップ | ステップの詳細 |
---|---|---|
1 | 補助金受領時の取引を登録する | 補助金受領時の取引を登録します。 補助金受領時の取引登録では「事業主借」勘定を用います。 |
2 | 固定資産取得時の取引を登録する | 固定資産取得時の取引を登録します。 |
3 | 取得した固定資産に対する圧縮損を計上する | 取得した固定資産に対して、圧縮損を計上します。 ここでは「事業主貸」勘定を用います。 |
4 | 圧縮した固定資産を固定資産台帳へ登録する | ステップ3で圧縮損計上後の固定資産を、固定資産台帳へ登録します。 |
freeeで圧縮記帳を行う(法人の場合)
以下5ステップの各操作について、 モデルケース の例に沿って詳しくご説明します。
1. 不足している決算書表示名・勘定科目を登録する
このステップでは、freeeで圧縮記帳を行うにあたって、必要な決算書表示名・勘定科目の登録を行っていきます。
まずは、不足している決算書表示名の登録を行います。操作手順は次のとおりです。
- [マスタ・口座]メニュー →[勘定科目]をクリックします。
- 「勘定科目の一覧」画面右上の[決算書表示名の編集]ボタンをクリックします。
- 画面上部のタブを[損益計算書]に切り替え、下表の2つの決算書表示名をそれぞれ入力し[+追加する]ボタンをクリックします。
大分類 小分類 登録する決算書表示名 損益 特別利益 「国庫補助金収入」と入力します。 損益 特別損失 「固定資産圧縮損」と入力します。
次は、不足している勘定科目の登録を行います。操作手順は次のとおりです。
- 「勘定科目の一覧」画面に戻り、画面左上の[+新規作成]ボタンをクリックします。
- 追加する2つの勘定科目について、それぞれ下表の内容で項目を入力し[保存]ボタンをクリックします。
国庫補助金収入 固定資産圧縮損 勘定科目名 「国庫補助金収入」と入力します。 「固定資産圧縮損」と入力します。 勘定科目のカテゴリー 「特別利益」を選択します。 「特別損失」を選択します。 決算書表示名
(小カテゴリー)「国庫補助金収入」を選択します。 「固定資産圧縮損」を選択します。 税区分 「対象外」を選択します。 「対象外」を選択します。 その他の項目 ※ 任意で入力します。 ※ 任意で入力します。
2. 補助金受領時の取引を登録する
このステップでは、補助金受領時の収入取引を登録していきます。操作手順は次のとおりです。
※ ここでは、「自動で経理」画面から登録する場合を例にご説明します。
- [取引入力]メニュー →[自動で経理]をクリックします。
- 表示されている明細の一覧から国庫補助金受領時の明細をクリックし、「取引登録」タブに切り替えます。
- 下表のとおり補助金受け入れの取引内容を入力し、[登録(Ctrl + Enter)]ボタンをクリックします。
項目名 入力内容 発生日 明細の日付と同日になるように入力します。
(本モデルケースでは「2022-04-01」と入力します)勘定科目 「国庫補助金収入」と入力します。 税区分 「対象外」を選択します。 金額 受け入れた補助金の金額を入力します。
(本モデルケースの場合は「5000000」円と入力します)※ その他の項目 ※ 任意で入力します。
3. 固定資産取得時の取引を登録する
このステップでは、固定資産購入時の支出取引を登録していきます。操作手順は次のとおりです。
※ ここでは、「自動で経理」画面から登録する場合を例にご説明します。
- [取引入力]メニュー →[自動で経理]をクリックします。
- 表示されている明細の一覧から固定資産購入時の明細をクリックし、「取引登録」タブに切り替えます。
- 下表のとおり固定資産購入の取引内容を入力し、[登録(Ctrl + Enter)]ボタンをクリックします。
項目名 入力内容 発生日 明細の日付と同日になるように入力します。
(本モデルケースでは「2022-04-01」と入力します)勘定科目 購入した固定資産の種別に該当する勘定科目を入力します。
(本モデルケースの場合は「機械装置」と入力します)税区分 発生日時点にもとづく課対仕入の税区分を選択します。
(本モデルケースの場合は「課対仕入10%」を選択します)金額 購入した固定資産の取得価額を入力します。
(本モデルケースの場合は「10000000」円と入力します)※ その他の項目 ※ 任意で入力します。
4. 取得した固定資産に対する圧縮損を計上する
このステップでは、固定資産購入時の取得価額に対して「固定資産圧縮損」を計上していきます。操作手順は次のとおりです。
※ ここでは、「振替伝票」画面から登録する場合を例にご説明します。
- [取引入力]メニュー →[振替伝票]をクリックします。
- 下表のとおり固定資産圧縮損の内容を入力し、[登録]ボタンをクリックします。
項目名 入力内容 発生日 固定資産圧縮損計上時の日付を入力します。
(本モデルケースでは「2022-04-01」と入力します)日常仕訳 / 決算整理仕訳
のラジオボタン[日常仕訳]を選択します。
※ 決算日に本振替伝票を登録する場合は、[決算整理仕訳]を選択します。借方:勘定科目 「固定資産圧縮損」と入力します。 借方:金額 税法上の圧縮限度額の金額を入力します。
(本モデルケースでは「5000000」円と入力します)借方:税区分 (初期状態で選択されている)「対象外」を選択します。 貸方:勘定科目 購入した固定資産の種別に該当する勘定科目を入力します。
(本モデルケースでは「機械装置」と入力します)貸方:金額 税法上の圧縮限度額の金額を入力します。
(本モデルケースでは「5000000」円と入力します)貸方:税区分 「対象外」に変更します。 ※ その他の項目 ※ 任意で入力します。
5. 圧縮した固定資産を固定資産台帳へ登録する
このステップでは、圧縮損計上後の固定資産を固定資産台帳へ登録していきます。操作手順は次のとおりです。
- [決算申告]メニュー →[固定資産台帳]をクリックします。
- 画面左上の[+固定資産を登録]ボタンをクリックします。
- 「固定資産の登録」画面にて、必要な情報を入力し[保存]ボタンをクリックします。
※ このとき「取得価額」項目には、 固定資産圧縮損計上後の取得価額 を入力することにご注意ください。
項目カテゴリ 項目名 入力内容 基本情報 資産の名前 固定資産台帳上で個々の固定資産を識別するための名称を入力します。 取得日 固定資産の取得日を入力します。
(本モデルケースでは「2022-04-01」と入力します)事業供用開始日 固定資産の使用を開始した日を入力します。
(本モデルケースでは「2022-04-01」と入力します)取得価額 固定資産の取得価額を入力します。
(本モデルケースでは 圧縮損計上後の「5000000」円 と入力します)勘定科目 購入した固定資産の種別に該当する勘定科目を選択します。
(本モデルケースでは「機械装置」を選択します)数量又は面積 購入した固定資産の数量・面積と単位を入力します。
償却情報 償却方法 償却方法を選択します。
(本モデルケースでは「定額法」を選択します)耐用年数 耐用年数を入力します。
(本モデルケースでは「5」年と入力します)※ その他の項目 ※ 任意で入力します。 管理情報 ※ 「管理番号」等のその他の項目 ※ 任意で入力します。
freeeで圧縮記帳を行う(個人事業主の場合)
以下4ステップの各操作について、 モデルケース の例に沿って詳しくご説明します。
1. 補助金受領時の取引を登録する
このステップでは、補助金受領時の収入取引を登録していきます。操作手順は次のとおりです。
※ ここでは、「自動で経理」画面から登録する場合を例にご説明します。
- [取引入力]メニュー →[自動で経理]をクリックします。
- 表示されている明細の一覧から国庫補助金受領時の明細をクリックし、「取引登録」タブに切り替えます。
- 下表のとおり補助金受け入れの取引内容を入力し、[登録(Ctrl + Enter)]ボタンをクリックします。
項目名 入力内容 発生日 明細の日付と同日になるように入力します。
(本モデルケースでは「2022-04-01」と入力します)勘定科目 「事業主 借 」と入力します。 税区分 「対象外」を選択します。 金額 受け入れた補助金の金額を入力します。
(本モデルケースの場合は「5000000」円と入力します)※ その他の項目 ※ 任意で入力します。
2. 固定資産取得時の取引を登録する
このステップでは、固定資産購入時の支出取引を登録していきます。操作手順は次のとおりです。
※ ここでは、「自動で経理」画面から登録する場合を例にご説明します。
- [取引入力]メニュー →[自動で経理]をクリックします。
- 表示されている明細の一覧から固定資産購入時の明細をクリックし、「取引登録」タブに切り替えます。
- 下表のとおり固定資産購入の取引内容を入力し、[登録(Ctrl + Enter)]ボタンをクリックします。
項目名 入力内容 発生日 明細の日付と同日になるように入力します。
(本モデルケースでは「2022-04-01」と入力します)勘定科目 購入した固定資産の種別に該当する勘定科目を入力します。
(本モデルケースの場合は「機械装置」と入力します)税区分 発生日時点にもとづく課対仕入の税区分を選択します。
(本モデルケースの場合は「課対仕入10%」を選択します)金額 購入した固定資産の取得価額を入力します。
(本モデルケースの場合は「10000000」円と入力します)※ その他の項目 ※ 任意で入力します。
3. 取得した固定資産に対する圧縮損を計上する
このステップでは、固定資産購入時の取得価額に対して、固定資産圧縮損相当の「事業主 貸 」を計上していきます。操作手順は次のとおりです。
※ ここでは、「振替伝票」画面から登録する場合を例にご説明します。
- [取引入力]メニュー →[振替伝票]をクリックします。
- 下表のとおり固定資産圧縮損の内容を入力し、[登録]ボタンをクリックします。
項目名 入力内容 発生日 固定資産圧縮損計上時の日付を入力します。
(本モデルケースでは「2022-04-01」と入力します)日常仕訳 / 決算整理仕訳
のラジオボタン[日常仕訳]を選択します。
※ 決算日に本振替伝票を登録する場合は、[決算整理仕訳]を選択します。借方:勘定科目 「事業主 貸 」と入力します。 借方:金額 税法上の圧縮限度額の金額を入力します。
(本モデルケースでは「5000000」円と入力します)借方:税区分 (初期状態で選択されている)「対象外」を選択します。 貸方:勘定科目 購入した固定資産の種別に該当する勘定科目を入力します。
(本モデルケースでは「機械装置」と入力します)貸方:金額 税法上の圧縮限度額の金額を入力します。
(本モデルケースでは「5000000」円と入力します)貸方:税区分 「対象外」に変更します。 ※ その他の項目 ※ 任意で入力します。
4. 圧縮した固定資産を固定資産台帳へ登録する
このステップでは、圧縮損計上後の固定資産を固定資産台帳へ登録していきます。操作手順は次のとおりです。
- [確定申告]メニュー → [固定資産台帳]をクリックします。
- 画面左上の[+固定資産を登録]ボタンをクリックします。
- 「固定資産の登録」画面にて、必要な情報を入力し[保存]ボタンをクリックします。
※ このとき「取得価額」項目には、 固定資産圧縮損計上後の取得価額 を入力することにご注意ください。
項目カテゴリ 項目名 入力内容 基本情報 資産の名前 固定資産台帳上で個々の固定資産を識別するための名称を入力します。 取得日 固定資産の取得日を入力します。
(本モデルケースでは「2022-04-01」と入力します)事業供用開始日 固定資産の使用を開始した日を入力します。
(本モデルケースでは「2022-04-01」と入力します)取得価額 固定資産の取得価額を入力します。
(本モデルケースでは 圧縮損計上後の「5000000」円 と入力します)勘定科目 購入した固定資産の種別に該当する勘定科目を選択します。
(本モデルケースでは「機械装置」を選択します)数量又は面積 購入した固定資産の数量・面積と単位を入力します。
償却情報 償却方法 償却方法を選択します。
(本モデルケースでは「定額法」を選択します)耐用年数 耐用年数を入力します。
(本モデルケースでは「5」年と入力します)※ その他の項目 ※ 任意で入力します。 管理情報 ※ 「管理番号」等のその他の項目 ※ 任意で入力します。
ご注意
本ページの勘定科目および会計処理については一般的なものであり、お客様の固有のケースによっては異なる場合があります。また、圧縮記帳を適用する場合には一定の要件が必要です。
適用できるかどうかの判断、ご不明点・ご不安な点については、顧問税理士あるいは所轄の税務署へご確認ください。