従業員に基本給とは別に手当を支給する場合、その手当が所得税・社会保険料の計算対象となるかをきちんと確認しましょう。
また、割増賃金や勤怠控除の計算に加える必要があるかどうかも確認しておくことで、正しい給与計算ができます。
手当の設定手順については、「その他手当を設定する」のヘルプページをご覧ください。
目次
所得税がかかる手当
所得税は、基本給以外の各種手当にもかかります。具体的には以下のとおりです。
所得税がかかる手当
- 残業手当、休日出勤手当、資格手当、住宅手当、家族手当、役職手当、退職手当など
所得税がかからない手当
- 旅費、海外渡航費、通勤手当、制服、社宅、技術習得費用など
※ 通勤手当の非課税で支給できる範囲については、「非課税通勤手当について」のヘルプページをご覧ください。
社会保険料の計算対象や固定的賃金の計算に含める手当
手当には、標準報酬月額(社会保険料の計算をしやすくするために被保険者(従業員)が得た給与などのひと月分の報酬を一定の範囲ごとに区分したもの)に含まれるものと含まれないものがあります。
なお、標準報酬月額は、標準報酬月額に含まれるすべての手当や給与を合算した額となります。そして、総額の属する等級の保険料を支払うことになります。
具体的には以下のとおりです。
社会保険料の計算対象となる手当(標準報酬月額に含まれる手当)
- 家族手当、住宅手当、残業手当、役職手当、通勤手当など
- 食事、住宅、通勤定期など現物で支給されるもの
社会保険料の計算対象ではない手当(標準報酬月額に含まれない手当)
- 労働の対象とされないもの(お祝い金、見舞金等)
- 臨時的に受けるもの(大入り袋、出張旅費)
- 年間3回まで支給される賞与
※ 通勤手当は、所得税では非課税で支給できますが、社会保険においては標準報酬に含まれ、算定基礎の対象となります。
※ 現物で支給されるものについては、厚生労働大臣が定めた標準価格に基づき、通貨に換算され、報酬に含まれます。
固定的賃金とは
社会保険料の計算対象に含まれる賃金の中でも、勤務時間や実績に関係なく月単位などで一定額が継続して支給される報酬のことを「固定的賃金」といい、算定基礎届・月額変更届の処理に必要な情報となります。
残業代やインセンティブなど、個人の稼働実績に応じて毎月変動するような賃金は非固定的賃金となります。
固定的賃金が大幅に変動した場合、随時改定を行う必要があります。
変動に当てはまるケースは、具体的には以下のとおりです。
- 昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
- 給与体系の変更(日給から月給への変更等)
- 日給や時間給の基礎単価(日当、単価)の変更
- 請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
- 住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更
- 通勤手当支給額が変更された時(従業員や会社の引っ越し等に伴う)
詳しくは「日本年金機構:随時改定(月額変更届)」のページをご参照ください。
「社会保険料の計算」と「固定的賃金の計算」の選択について
よくある設定の組み合わせは以下のとおりです。
- 「社会保険料の計算:含める」かつ「固定的賃金の計算:含める」
- 「社会保険料の計算:含める」かつ「固定的賃金の計算:含めない」
- 「社会保険料の計算:含めない」かつ「固定的賃金の計算:含めない」
※ 上記にない組み合わせ「社会保険料の計算:含めない」かつ「固定的賃金の計算:含める」を選択するケースは通常ありません。
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「社会保険料の計算:含める」かつ「固定的賃金の計算:含める」ケース
勤務時間や成績に関係なく、月単位などで一定額が継続して支給される手当で、一般的には以下のとおりです。- 固定残業手当、家族手当、住宅手当、役職手当、通勤手当など
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「社会保険料の計算:含める」かつ「固定的賃金の計算:含めない」を選択するケース
残業や営業成績、勤怠などによって支給額が変動する手当で、一般的には以下のとおりです。- 固定残業以外の残業手当、能率手当、皆勤手当、精勤手当など
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「社会保険料の計算:含めない」かつ「固定的賃金の計算:含めない」を選択するケース
一般的には以下のとおりです。- 労働の対象とされないもの(お祝い金、見舞金等)
- 臨時的に受けるもの(大入り袋、出張旅費)
- 年間3回まで支給される賞与
手当の計算タイプで「勤怠項目に応じて支給」を選択した場合
実際の支給額ではなく、「金額の初期値」に入力した単価が固定的賃金としてみなされます。
※ 「勤怠項目に応じて支給」は、「勤怠項目」と「金額の初期値」の項目から手当の支給額を自動計算する計算タイプです。詳しくは、以下ヘルプページをご覧ください。
割増賃金の計算対象とする手当(割増賃金の基礎に含める手当)
割増賃金は1時間あたりの賃金に割増率をかけて算出しますが、この「1時間あたりの賃金(割増賃金の基礎)」は、従業員に支給する手当の金額も入れて計算する必要があります。
ただし、以下の手当については、割増賃金の基礎に含めなくても構いません。
(これらの手当は労働との関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されている等の理由からです)
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
詳しくは厚生労働省の資料「割増賃金の基礎となる賃金とは?」もご参照ください。