有価証券の売却は、振替伝票の入力によって処理します。
個人事業主の場合、売却損益が譲渡所得にあたるかどうかを考慮する必要があります。
本ページは、有価証券の売却に関するページです。
有価証券の購入については「有価証券を購入した(口座を作成して処理する場合)」または「有価証券を購入した(口座を作成せずに処理する場合)」をご確認ください。
目次
有価証券の売却損益について
有価証券の売却を記帳する際に、有価証券の売却益または売却損を計算します。
計算式は下記の通りです。
売却損益 = 売却価額 - 帳簿価額
また、有価証券の帳簿価額については「総平均法」または「移動平均法」という計算方法で求めます。
- 総平均法:期首保有分と一定期間の購入分との合計金額をその合計数量で割って、平均単価を計算する方法
- 移動平均法:有価証券を購入するたびに直前の取得原価と購入金額の合計金額を購入後数量で割って平均単価を計算し直す方法
具体的な説明や計算例については「有価証券売却益(損)の処理 -(3)総平均法と移動平均法」をご確認ください。
事前設定
事前に「有価譲渡」という税区分を使用できるように設定が必要となります。
設定手順は下記の通りです。
- [設定]メニュー →[税区分の設定]を開きます。
- 「有価譲渡」欄の[設定]ボタンをクリックします。
- この税区分を使用する、「収入の登録」で検索可能にする、「支出の登録」で検索可能にする の3項目にチェックを入れ、[登録]ボタンをクリックします。
有価証券の売却を記帳する(売却益が出た場合)
有価証券を売却した場合は下記の手順で取引登録を行います。
このセクションでは「売却益」が出た場合の登録方法を説明します。
例:
2024年6月1日に売買目的の有価証券(帳簿価額100万円)を110万円で売却し、代金は後日受け取りとなった。
- [取引]メニュー →[取引の一覧・登録]を開きます。
- [詳細登録]ボタンをクリックします。
- 下表を参考に各項目を入力します。
項目名 入力内容 入力例 収支 [収入]を選択します。 収入 決済 [未決済]を選択します。 未決済 発生日 有価証券を売却した日を入力します。 2024-06-01 取引先 必要に応じて入力します。 フリー証券 決済期日 必要に応じて入力します。 2024-06-07 勘定科目 売却した有価証券の種類に応じて入力します。 有価証券 税区分 一部を除き、有価証券の売却は非課税となります。(※2) 対象外 金額 売却した有価証券の帳簿価額を入力します。 1,000,000 品目・部門・
メモタグ・セグメント(※1)必要に応じて入力します。 品目:売買目的 備考 必要に応じて入力します。 帳簿価額100万円 -
[+行を追加]ボタンをクリックし、下表を参考に追加行を入力します。
項目名 入力内容 入力例 勘定科目(2行目) [有価証券売却益]を入力します。 有価証券売却益 税区分(2行目) 「有価譲渡」という税区分を選択します。
※勘定科目を入力すると自動的に選択されます。有価譲渡 金額(2行目) 有価証券の売却額を入力します。 1,100,000 品目・部門・
メモタグ・セグメント(2行目)必要に応じて入力します。 - 備考(2行目) 必要に応じて入力します。 帳簿価額110万円 -
[+控除・マイナス行を追加]ボタンをクリックし、下表を参考に追加行を入力します。
項目名 入力内容 入力例 勘定科目(3行目) [有価証券売却益]を入力します。 有価証券売却益 税区分(3行目) 「対象外」を選択します。 対象外 金額(3行目) 有価証券の帳簿価額を入力します。 1,000,000 品目・部門・
メモタグ・セグメント(3行目)必要に応じて入力します。 - 備考(3行目) 必要に応じて入力します。 帳簿価額100万円 - 入力が完了したら[登録]ボタンをクリックします。
※1:セグメントは個人事業主、ミニマムプラン、ベーシックプランでは利用できません。
※2:ゴルフ利用株式等の売却は、通常の有価証券の売却と異なり課税取引となります。税区分は「課税売上」とします。詳しくは、国税庁のホームページをご確認ください。
「有価証券売却益」を2行入力する理由について
一般的に、有価証券を売却して得た収益は「非課税売上」となるため、消費税の税区分は「有価譲渡」を用います。これは他の非課税売上と一緒になるのを避け、「課税売上割合」を正しく計算するためです。
そのため、非課税売上を正しく計上するために売却価額(例の場合は110万円)を入力します。
ただし、このままだと「売却価額=売却益」として計上されてしまうため、帳簿価額(例の場合は100万円)と同額の「有価証券売却益」をマイナス行で入力することで、正しい売却益を計上できるようにしています。
有価証券の売却を記帳する(売却損が出た場合)
有価証券を売却した場合は下記の手順で取引登録を行います。
このセクションでは「売却損」が出た場合の登録方法を説明します。
例:
2024年6月1日に売買目的の有価証券(帳簿価額100万円)を80万円で売却し、代金は後日受け取りとなった。
- [取引]メニュー →[取引の一覧・登録]を開きます。
- [詳細登録]ボタンをクリックします。
- 下表を参考に各項目を入力します。
項目名 入力内容 入力例 収支 [収入]を選択します。 収入 決済 [未決済]を選択します。 未決済 発生日 有価証券を売却した日を入力します。 2024-06-01 取引先 必要に応じて入力します。 フリー証券 決済期日 必要に応じて入力します。 2024-06-07 勘定科目 売却した有価証券の種類に応じて入力します。 有価証券 税区分 一部を除き、有価証券の売却は非課税となります。(※2) 対象外 金額 売却した有価証券の帳簿価額を入力します。 1,000,000 品目・部門・
メモタグ・セグメント(※1)必要に応じて入力します。 品目:売買目的 備考 必要に応じて入力します。 帳簿価額100万円 -
[行を追加]ボタンをクリックし、下表を参考に追加行を入力します。
項目名 入力内容 入力例 勘定科目(2行目) [有価証券売却損]を入力します。 有価証券売却損 税区分(2行目) [有価譲渡]を選択します。 有価譲渡 金額(2行目) 有価証券の売却価額を入力します。 800,000 品目・部門・
メモタグ・セグメント(2行目)必要に応じて入力します。 - 備考(2行目) 必要に応じて入力します。 売却価額80万円 -
[+控除・マイナス行を追加]ボタンをクリックし、下表を参考に追加行を入力します。
項目名 入力内容 入力例 勘定科目(3行目) [有価証券売却損]を入力します。 有価証券売却損 税区分(3行目) 「対象外」を選択します。 対象外 金額(3行目) 有価証券の帳簿価額を入力します。 1,000,000 品目・部門・
メモタグ・セグメント(3行目)必要に応じて入力します。 - 備考(3行目) 必要に応じて入力します。 帳簿価額100万円 - 入力が完了したら[登録]ボタンをクリックします。
「有価証券売却損」を2行入力する理由について
一般的に、有価証券を売却して得た収益は「非課税売上」となるため、消費税の税区分は「有価譲渡」を用います。これは他の非課税売上と一緒になるのを避け、「課税売上割合」を正しく計算するためです。
そのため、非課税売上を正しく計上するために売却価額(例の場合は80万円)を入力します。
ただし、このままだと「売却価額=売却損」として計上されてしまうため、帳簿価額(例の場合は100万円)と同額の「有価証券売却損」をマイナス行で入力することで、正しい売却損を計上できるようにしています。
売却代金の入金を記帳する
売却代金が証券口座や事業用口座に入金された場合は、freee会計で入金処理を行います。
また、freee会計上に証券口座を作成しているか否かにより入金処理が異なります。
※証券口座については「有価証券を購入した(口座を作成して処理する場合)- 事前準備」をご確認ください。
それぞれの操作方法は下記の通りです。
例:
2024年6月1日に売却した有価証券の売却代金110万円が、2024年6月7日に証券口座に入金された。
freee会計に証券口座を作成している場合
- [取引]メニュー →[取引の一覧・登録]を開きます。
- 取引一覧の中から入金処理を行いたい取引をクリックします。
※表示されている数が多い場合は絞り込み条件を活用してお探しください。
- [+決済を登録]ボタンをクリックします。
- 「決済を登録」画面で下表を参考に各項目を入力し、[登録]ボタンをクリックします。
項目名 入力内容 入力例 入金先口座 入金された口座を選択します。 フリー証券 決済日 入金された日を入力します。 2024-06-07 入金額 口座に実際に入金された金額を入力します。 1,100,000
freee会計に証券口座を作成していない場合
- [取引]メニュー →[取引の一覧・登録]を開きます。
- 取引一覧の中から入金処理を行いたい取引をクリックします。
※表示されている数が多い場合は絞り込み条件を活用してお探しください。
- 決済欄の[+更新]ボタンをクリックします。
- 「更新する行を選択」画面が表示されたら[+更新]ボタンをクリックします。
- 下表を参考に「更新内容」の各項目を入力します。
項目名 入力内容 入力例 更新日 入金された日を入力します。 2024-06-07 勘定科目 [預け金]を入力します。 預け金 適格 チェックの有無は問いません。
※この項目は「買い手側対応機能」を[使用する]に設定している場合のみ表示されます。チェックボックスにチェックを入れる 税区分 [対象外]を選択します。
※勘定科目を入力すると自動的に選択されます。対象外 金額 入金された金額を入力します。 1,100,000 品目・部門・
メモタグ・セグメント必要に応じて入力します。 - 備考 必要に応じて入力します。 有価証券売却代金 - 入力が完了したら[保存]ボタンをクリックします。
売却時の手数料を登録する
有価証券の売却時に手数料を支払うケースが多いですが、この手数料についても記帳が必要です。
手数料の記帳については、
の4パターンがありますので、自社の経理方針に沿った方法でご登録ください。
また、代金が入金された際の登録方法は本ページの「売却代金の入金を記帳する」をご確認ください。
例:
2024年6月1日に売買目的の有価証券(帳簿価額100万円)を110万円で売却し、代金は後日受け取りとなった。
なお売却時に手数料1,000円が発生し、売却代金から差し引かれて受け取ることになった。
1.手数料を個別に登録する
- [取引]メニュー →[取引の一覧・登録]を開きます。
- 下表を参考に各項目を入力します。
項目名 入力内容 入力例 収支 [支出]を選択します。 支出 決済 - 手数料の支払いが完了している場合:完了
- 売却代金から手数料が差し引かれる場合:未決済
を入力します。
未決済 発生日 有価証券を売却した日を入力します。 2024-06-01 取引先 必要に応じて入力します。 フリー証券 適格請求書等
※買い手側対応機能を[使用する]に設定した場合のみ表示手数料の支払先が適格請求書発行事業者に該当する場合はチェックを入れます。 [該当する]にチェックを入れる 期日
※決済で[未決済]を選択した場合のみ表示必要に応じて入力します。 2024-06-07 勘定科目 一般的には「支払手数料」を入力します。
自社で使用している勘定科目がある場合はそちらをご入力ください。支払手数料 金額 手数料の金額を入力します。 1,000 品目・部門・
メモタグ・セグメント必要に応じて入力します。 - 税区分
※[詳細登録]ボタンをクリックするとこの項目が表示されます。勘定科目を入力すると自動的に選択されます。
必要に応じて適切な税区分を選択してください。課対仕入10% 備考 必要に応じて入力します。 - - 入力が完了したら[支出を登録]ボタンをクリックします。
2.有価証券売却の取引に行を追加して登録する
「有価証券の売却を記帳する(売却益が出た場合)」または「有価証券の売却を記帳する(売却損が出た場合)」の手順2にマイナス行を追加する形で登録します。
-
売却益または売却損の手順2の内容を入力し、[+控除・マイナス行を追加]ボタンをクリックして行を追加します。
- 下表を参考に追加行に入力を行います。
項目名 入力内容 入力例 勘定科目(4行目) 一般的には「支払手数料」を入力します。
自社で使用している勘定科目がある場合はそちらをご入力ください。支払手数料 金額(4行目) 手数料の金額を入力します。 1,000 品目・部門・
メモタグ・セグメント(4行目)必要に応じて入力します。 品目:売却手数料 税区分(4行目) 勘定科目を入力すると自動的に選択されます。
必要に応じて適切な税区分を選択してください。課対仕入10% 備考(4行目) 必要に応じて入力します。 - - 入力が完了したら[登録]ボタンをクリックします。
3.有価証券売却損益に含めて登録する
「支払手数料」として登録せず、「有価証券売却益」または「有価証券売却損」の金額に含める形で登録します。
この方法で登録する場合は、帳簿価額側の「有価証券売却益」または「有価証券売却損」に手数料を足します。
冒頭の例の場合は「帳簿価額100万円、売却手数料1,000円」であるため、入力する金額は次の通りとなります。
1,000,000(帳簿価額) + 1,000(手数料) = 1,001,000
4.入金登録時に差額を支払手数料として登録する
支払手数料の発生日について
この方法で支払手数料を登録した場合は「支払手数料の発生日=入金日」となります。
売却日と同じ日に支払手数料を計上したい場合は、1~3の方法で登録を行ってください。
こちらの方法は、freee会計上に「証券口座を作成している場合」と「証券口座を作成していない場合」で異なります。
それぞれの登録方法は下記の通りです。
証券口座を作成している場合
本ページの「freee会計に証券口座を作成している場合」と同じ手順で登録を行いますが、手順4で入力する内容が少し異なります。
「入金を登録」画面の[入金額]に手数料を差し引いた金額を入力し、[支払手数料として登録する]にチェックを入れて[登録]ボタンをクリックします。
冒頭の例の場合は、下表のように登録します。
項目名 | 入力内容 | 入力例 |
---|---|---|
入金先口座 | 入金された口座を選択します。 | フリー証券 |
決済日 | 入金された日を入力します。 | 2024-06-07 |
入金額 | 口座に実際に入金された金額を入力します。 | 1,099,000 |
差額 | [支払手数料として登録する]にチェックを入れます。 | [支払手数料として登録する]にチェック |
証券口座を作成していない場合
本ページの「freee会計に証券口座を作成していない場合」と同じ手順で登録を行いますが、手順5で入力する内容が少し異なります。
[+行を追加]ボタンをクリックし、追加行の各項目に手数料を入力したら[保存]ボタンをクリックします。
※1行目の「金額」欄は手数料を差し引いた金額を入力してください。(表中の黒太字を参照)
冒頭の例の場合は、下表のように登録します。
項目名 | 入力内容 | 入力例 |
---|---|---|
更新日 | 入金された日を入力します。 | 2024-06-07 |
勘定科目(1行目) | [預け金]を入力します。 | 預け金 |
適格(1行目) | チェックの有無は問いません。 ※この項目は「買い手側対応機能」を[使用する]に設定している場合のみ表示されます。 |
チェックボックスにチェックを入れる |
税区分(1行目) | [対象外]を選択します。 ※勘定科目を入力すると自動的に選択されます。 |
対象外 |
金額(1行目) | 入金された金額(売却代金 - 手数料)を入力します。 | 1,099,000 |
品目・部門・ メモタグ・セグメント(1行目) |
必要に応じて入力します。 | - |
備考(1行目) | 必要に応じて入力します。 | 有価証券売却代金 |
勘定科目(2行目) | [支払手数料]を入力します。 | 支払手数料 |
適格(2行目) | チェックボックスにチェックを入れます。 ※この項目は「買い手側対応機能」を[使用する]に設定している場合のみ表示されます。 |
チェックボックスにチェックを入れる |
税区分(2行目) | 勘定科目を入力すると自動的に選択されます。 必要に応じて適切な税区分を選択してください。 |
課対仕入10% |
金額(2行目) | 発生した手数料の金額を入力します。 | 1,000 |
品目・部門・ メモタグ・セグメント(2行目) |
必要に応じて入力します。 | - |
備考(2行目) | 必要に応じて入力します。 | - |
参考:個人事業主が有価証券を売却した場合
一般的に個人事業主が事業用として有価証券を所有することは認められていないため、有価証券を売却してもfreee会計に登録する必要はありません。(事業所得に該当する有価証券取引を行う個人事業主は除く)
ただし、売却代金が事業用の口座に入金された場合は、勘定科目「事業主借」を用いて取引登録を行います。
例:
2024年6月1日に、有価証券の売却代金100万円が事業用口座に入金された。
- [取引]メニュー →[取引の一覧・登録]を開きます。
- 下表を参考に各項目を入力します。
項目名 入力内容 入力例 収支 [収入]を選択します。 収入 決済 [完了]を選択します。 完了 口座 入金があった事業用口座を選択します。 フリー銀行 発生日 事業用口座に入金された日を入力します。 2024-06-01 取引先 必要に応じて入力します。 フリー証券 勘定科目 「事業主借」を入力します。 事業主借 金額 入金された金額を入力します。 1,000,000 品目・部門・メモタグ 必要に応じて入力します。 品目:有価証券売却 備考 必要に応じて入力します。 - - 入力が完了したら[収入を登録]ボタンをクリックします。
なお、有価証券の売買による所得が譲渡所得などに該当する場合は、「確定申告書類の作成」画面で別途入力が必要です。
詳しくは「株式等を売却した場合の記入方法」をご確認ください。