農業を営んでいる場合のfreeeの操作方法についてご紹介します。こちらのページでは、特に個人事業主として事業を運営されている方に向けて記帳方法を中心にご案内をします。
目次
freeeでの記帳について
農業を営んでいる場合のfreeeでの記帳方法についてご紹介します。
専用の勘定科目を登録しておくことをお勧めします。
(農業用の科目の設定・事前準備などの詳細はこちら)
(農業所得の確定申告の方法についてはこちら)
日々の登録方法
1. JAへの委託販売を通じて得た収入
JAへの委託販売の形式で売り上げを得ている場合、最初にJAから契約金を受け取った後、実際に農産物の出荷をしたタイミングで契約金を相殺した残金が支払われることがあります。このような場合、契約金は「前受金」として登録した上で、残金の入金があった時に「売上高」に振り替える処理を行います。
(前受金の登録方法についてのヘルプページはこちら)
2. 外部から農作業の委託を受けて得た収入
自身で栽培・育成した農産物の販売収入とは別に、外部から農作業の委託を受けて得た収入は「作業受託収入」としてfreeeに登録します。「作業受託収入」という勘定科目はfreeeの初期値にはないため、勘定科目の新規登録で利用できるように設定してください。
3. 補助金や助成金などの収入
国や地方自治体から得た補助金や助成金の収入は「作付助成収入」などとしてfreeeに登録します。「作付助成収入」という勘定科目はfreeeの初期値にはないため、勘定科目の新規登録で利用できるように設定してください。
4. 農産物を自家用や贈答用に使用したとき
生産した農産物を自家用に使用したり、親戚などに贈答用として送ったりした場合、農産物の代金をもらわずに現物をそのまま消費することになります。代金の受け取りがなくても事業として収益が上がったことになるため、「家事消費等」という勘定科目でfreeeに登録します。
(家事消費等の登録方法についてのヘルプページはこちら)
年度末・年度初めの登録方法
1. 棚卸資産の種類
年度末時点で農業に関わる事業を通じて手元に残っている農産物・栽培資材・燃料などは、棚卸資産として評価し、freeeに登録する必要があります。資産の種類によって、以下のような勘定科目を使い分けます。それぞれのfreeeへの登録方法について説明します。
勘定科目 | 内容 | 備考・例 |
---|---|---|
農産物 |
販売目的で生産した物品 |
収穫済みの農産物の内、未販売で在庫となっているものなど |
仕掛品 |
農産物生産のため栽培・育成中のもの |
栽培中・未収穫の農産物や、販売目的で飼育途中の動物など |
原材料 |
生産目的で費消される物品 |
種子・肥料・飼料・農薬・冷凍精液など |
貯蔵品 |
生産・販売以外の目的で貯蔵される物品 |
燃料・包装材料・収入印紙など |
2. 農産物の評価方法
収穫済みの農産物の内、未販売で在庫となっているものを「農産物」という勘定科目で棚卸資産として計上します。該当金額を計算の上、振替伝票機能で以下の通り登録してください。なお「農産物」「期末農産物棚卸高」「期首農産物棚卸高」という勘定科目はfreeeの初期値にはないため、勘定科目の新規登録で利用できるように設定してください。
【期末】(借)農産物 / (貸)期末農産物棚卸高
【期首】(借)期首農産物棚卸高 / (貸)農産物
※振替伝票の操作方法についてのヘルプページはこちら
なお、通常の簿記であれば、棚卸資産の種類・品質・型などが異なるもの毎に、数量・単価・金額を記載するのが原則ですが、農業においては以下の「簡便法」での評価でもよいとされています。
米麦等の穀類 | 野菜等生鮮な農産物 | その他農産物 | |
---|---|---|---|
区分 |
①野菜 ②収穫から販売・消費が終了するまでの期間が比較的短い果物 |
①収穫から販売・消費が終了するまでの期間が比較的長い果物 ②いも類 |
|
例示 |
米・麦・大豆 |
野菜・ぶどう・もも・なし・びわ |
みかん・りんご・くり・甘しょ(さつまいも)・ばれいしょ |
棚卸表への記載 |
数量・単価・金額を記載する |
記載を省略する |
数量・単価・金額を記載する 数量が僅少のものは省略する |
3. 仕掛品・原材料の評価方法
まだ収穫に至っていない栽培中の農産物や、販売目的で肥育中の動物などは、次年度以降に販売される対象となるため「仕掛品」という勘定科目で棚卸資産として評価します。また、種子・肥料・飼料・農薬などの農業資材の内、年度末に未使用で残っている場合は「原材料」という勘定科目で棚卸資産として評価します。
該当金額を計算の上、振替伝票で以下の通り登録してください。なお「期末仕掛品棚卸高」「期首仕掛品棚卸高」「期末材料棚卸高」「期首材料棚卸高」という勘定科目はfreeeの初期値にはないため、勘定科目の新規登録で利用できるように設定してください。
仕掛品
【期末】(借)仕掛品 / (貸)期末仕掛品棚卸高
【期首】(借)期首仕掛品棚卸高 / (貸)仕掛品
原材料
【期末】(借)原材料 / (貸)期末材料棚卸高
【期首】(借)期首材料棚卸高 / (貸)原材料
4. 貯蔵品の評価方法
農産物の栽培・育成に直接関わりのない資材(軽油・梱包材など)の内、年度末に未使用で残っている場合は「貯蔵品」という勘定科目で棚卸資産として評価します。該当金額を計算の上、以下の通り振替伝票で登録してください。
※期中においては、消耗品費などの科目を用いて計上し、期末において在庫高を棚卸資産へ振り替える処理を行います。なお、貯蔵品に関しては、他の棚卸資産とは異なり「期末(期首)◯◯棚卸残高」という勘定科目は利用しません。以下の例を参考に、freeeに実際に登録した勘定科目を直接入力してください。
【期末】(借)貯蔵品 / (貸)XXX(freeeに実際に登録した勘定科目)
【期首】(借)XXX(同上) / (貸)貯蔵品
5. 生物の固定資産管理について(果樹・搾乳牛・繁殖豚など)
成熟した果樹・搾乳牛・繁殖豚など、生産活動を行っている状態の果樹や家畜は「生物」という勘定科目を用いて、固定資産として減価償却を行います。これらの果樹・家畜は、生産活動を開始するまでに要した育成費用を積み上げた金額を、固定資産の取得価額として計算します。
この処理を行うために、毎年度末に育成期間中の果樹・家畜にかかった肥料費・飼料費などの総計を「育成仮勘定」といういわば仮置きの固定資産に振り替える処理を行います。また、年度中に生産活動を開始した果樹・家畜は「育成仮勘定」から「生物」という固定資産に振り替えた上で、減価償却の対象として管理を開始します。
固定資産として減価償却が行われる対象とその耐用年数については、国税庁のHPをご確認ください。
具体的には、上記それぞれのタイミングにおいて、以下の通り登録します。
年度末時点で生産活動を開始していない果樹・家畜の育成に要した費用
1. 期末に以下の通り振替伝票に登録します。
(借)育成仮勘定 / (貸)育成費振替高
年度末時点で新たに生産活動を開始した果樹・家畜の育成に要した費用
1. 期末に以下の通り振替伝票に登録します。
(借)生物 / (貸)育成仮勘定
2. 加えて、固定資産台帳に該当の「生物」に関する減価償却の設定を行います。
なお、「育成仮勘定」「育成費振替高」「生物」という勘定科目はfreeeの初期値にはないため、勘定科目の新規登録で利用できるように設定してください。
※固定資産の旧定額法での減価償却に関して、freeeは任意の残存割合を設定することができず、一律で10%と登録されます。
そのため、10%以外の残存割合で減価償却管理が必要な生物資産(例:豚 30%、果樹その他の植物 5%)については、現在の機能では対応ができません。現行の償却法では問題なく対応ができます。