freeeでは、受取手形・支払手形で決済した取引は、手形口座または「+更新」を用いて登録します。これは、freeeの「取引」では決済状況と勘定科目の組み合わせで「売掛金」等の債権・債務を自動計上し、決済方法の違いを直接反映しないためです。
振り出した手形が不渡りとならないよう支払期日の当座預金口座に資金を準備する、受け取った手形の呈示期間を把握しておくという点については、別途手形記入帳で管理する必要があります。
本ページでは、手形口座を登録せずに記帳する方法を案内しています。
口座を作成して記帳する方法は「手形口座を作成して受取手形・支払手形による決済を記帳する」をご覧ください。
目次
「+更新」を用いて処理する方法
口座を作らずに、受取手形、支払手形の勘定科目の残高で確認する方法です。
「+更新」とは、一度入力した取引の仕訳について、借方・貸方のいずれかの勘定を更新する(振替える)機能です(ヘルプページは「貸倒損失の計上・経過勘定などの振替を行う(+更新)」)。「+更新」を用いた処理手順は、次の通りです。
受取手形の処理
例:
4月1日に100,000円の売上を計上する場合
- 受取手形を4月1日(同日)に受け取った場合の処理手順
- 借方:売掛金 100,000円 / 貸方:売上高 100,000円 の未決済取引を4月1日に登録します。※「売上高」を未決済取引として登録すると、自動で「売掛金」が相手勘定科目として認識されます。
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相手勘定科目「売掛金」に対して、「受取手形」100,000円を4月1日に受け取る処理(+更新)を行います。
- 受取手形を5月1日(別日)に受け取った場合の処理手順
- 借方:売掛金100,000円 / 貸方:売上高100,000円 の未決済取引を4月1日に登録します。
- 相手勘定科目「売掛金」に対して、「受取手形」100,000円を5月1日に受け取る処理(+更新)を行います。
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4月1日の売上について、未決済取引を入力します。
※ この時点では「売上高」の相手勘定科目として、「売掛金」が自動的に認識された状態です。
- 手順1で登録した取引の詳細を開き、「決済」欄の[+更新]ボタンを選択し、「売掛金」行の[+更新]ボタンをクリックします。
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更新日:売掛金に対して受取手形として受けとった日
手形の受取日4月1日の場合は、更新日4月1日
(手形の受取日5月1日の場合は、更新日5月1日※別日に手形を受け取る場合に、新しく未決済取引を登録する必要はありません。売掛金に対して受取手形を受け取った該当の未決済取引に対して更新します。) - 勘定科目:受取手形
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金額:売掛金から受取手形として受け取った「金額」と同額(例の場合:100,000)
更新内容を次のように入力し、ポップアップ画面右上の[保存]ボタンをクリックします。
※ もし勘定科目が候補表示されない場合は、 「受取手形」が検索で表示されるよう、[設定]メニュー →[勘定科目の設定]から、入力候補の使用するにチェックを設定しておきます。
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更新日:売掛金に対して受取手形として受けとった日
- 手形が現金化されるタイミングで、取引を登録します。
受取手形が期日を迎えて入金された場合、「受取手形」勘定の決済済み収入を登録します。
支払手形の処理
例:4月1日に100,000円の手形を振り出した場合
- 支払手形を4月1日(同日)に支払った場合の処理手順
- 借方:仕入高100,000円 / 貸方:買掛金100,000円 の未決済取引を4月1日に登録します。※「仕入高」を未決済取引として登録すると、自動で「買掛金」が相手勘定科目として認識されます。
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相手勘定科目「買掛金」に対して、「支払手形」100,000円を4月1日に支払う処理(+更新)を行います。
- 支払手形を5月1日(別日)に支払った場合の処理手順
- 借方:仕入高100,000円 / 貸方:買掛金100,000円 の未決済取引を4月1日に登録します。
- 相手勘定科目「買掛金」に対して、「支払手形」100,000円を5月1日に支払う処理(+更新)を行います。
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4月1日の仕入について、未決済取引を入力します。
※ この時点では「仕入高」の相手勘定科目として、「買掛金」が自動的に認識された状態です。
- 手順1で登録した取引の詳細を開き、「決済」欄の[+更新]ボタンを選択し、「買掛金」行の[+更新]ボタンをクリックします。
- 更新内容を次のように入力し、ポップアップ画面右上の[保存]ボタンをクリックします。
-
更新日:買掛金に対して支払手形として受けとった日
手形の振出日4月1日の場合は、更新日4月1日
(手形の振出日5月1日の場合は、更新日5月1日※別日に手形を振り出した場合に、新しく未決済取引を登録する必要はありません。買掛金に対して支払手形を振り出した該当の未決済取引に対して更新します。) - 勘定科目:支払手形
- 金額:買掛金から支払手形として振り出した「金額」と同額(例の場合:100,000)
※ もし勘定科目が候補表示されない場合は、 「受取手形」が検索で表示されるよう、[設定]メニュー →[勘定科目の設定]から、入力候補にチェックを設定しておきます。 -
更新日:買掛金に対して支払手形として受けとった日
-
手形が支払われるタイミングで、取引を登録します。
支払手形が期日を迎えて支払われた場合、「支払手形」勘定の決済済み支出を登録します。
参考:手形を裏書譲渡した場合の処理
直接減額法の場合、次のように処理します。
手形仕入について、「買掛金」(または未払金など)を更新する際に、「受取手形」勘定で更新します。
例:
A社から受け取った手形1,000,000円を、2023年10月10日にB社への仕入の支払として裏書譲渡した。
- [取引]メニュー →[取引の一覧・登録]を開きます。
- 該当の未決済取引の編集画面を開き、「決済」列の[+更新]をクリックします。
- 「更新する行を選択」画面が表示されるので、[+更新]をクリックします。
- 「更新内容」の各項目を以下のように入力し、[保存]をクリックします。
項目名 入力例 更新日 2023-10-10 勘定科目 受取手形 税区分 対象外 金額 1,000,000 品目・部門・メモタグ・セグメント
※セグメントは法人アドバンスプラン以上(または旧プロフェッショナルプラン以上)でのみ設定できます。
メモタグ:A789012 備考 裏書譲渡 B社 11/30期日
参考:手形の割引を行った場合の処理
受取手形を支払期日よりも前に銀行等に買い取ってもらった場合、割引料が発生します。この場合、次のように処理を行います。
なお、このセクションでは振替伝票を用いて登録しますので、振替伝票の登録方法について、詳しくは「振替伝票を作成する(仕訳形式で記帳する)」をご確認ください。
例:A社が振り出した手形50万円を支払期日より前に現金化し、割引料5千円が発生した。
- [決算]メニュー →[振替伝票]を開きます。
- 「発生日」に手形を換金した日付を入力し、[日常仕訳]を選択します。
- 勘定科目や金額などを以下の表のように入力します。なお、2行目は[+行を追加]をクリックすると追加できます。
項目名 借方 貸方 勘定科目(1行目) 現金 受取手形 税区分(1行目) 対象外 対象外 金額(1行目) 495,000 500,000 取引先・品目・部門・メモタグ・セグメント(1行目)
※セグメントは法人アドバンスプラン以上(または旧プロフェッショナルプラン以上)でのみ利用できます。- 取引先:A社 備考(1行目) - 10/31売上分
※どの売上に対する受取手形であるか等の情報を入力し、管理をしやすくすることをおすすめします。
勘定科目(2行目) 手形売却損 - 税区分(2行目) 対象外 - 金額(2行目) 5,000 - 取引先・品目・部門・メモタグ・セグメント(2行目) - - 備考(2行目) - - - 各項目の入力が完了したら[登録]をクリックします。
参考:受取手形が不渡りになった場合の処理
受取手形を不渡手形に振り替える
取引先の倒産などの理由で受取手形が不渡りになった場合、次のように処理をします。
なお、このセクションでは振替伝票を用いて登録しますので、振替伝票の登録方法について、詳しくは「振替伝票を作成する(仕訳形式で記帳する)」をご確認ください。
例:A社が倒産したため、受取手形50万円が不渡りになった。
- [決算申告]メニュー →[振替伝票]を開きます。
- 「発生日」に手形が不渡りになった日付を入力し、[日常仕訳]を選択します。
- 勘定科目や金額などを以下の表のように入力します。なお、2行目は[+行を追加]をクリックすると追加できます。
※償還請求費用5千円を現金で支払ったものとします。
項目名 借方 貸方 勘定科目(1行目) 不渡手形 受取手形 税区分(1行目) 対象外 対象外 金額(1行目) 505,000
※手形代金+償還請求費用の金額を入力します。
500,000 取引先・品目・部門・メモタグ・セグメント(1行目)
※セグメントは法人アドバンスプラン以上(または旧プロフェッショナルプラン以上)でのみ利用できます。取引先:A社 取引先:A社 備考(1行目) - 10/31売上分
※どの売上に対する受取手形であるか等の情報を入力し、管理をしやすくすることをおすすめします。
勘定科目(2行目) - 現金 税区分(2行目) - 対象外 金額(2行目) - 5,000 取引先・品目・部門・メモタグ・セグメント(2行目) - 品目:償還請求費用 備考(2行目) - - - 各項目の入力が完了したら[登録]をクリックします。
不渡手形を回収できなかった場合
不渡手形を回収できなかった場合、以下のように記帳します。また、貸倒引当金を計上している場合は貸倒引当金を取り崩します。
例:A社が倒産したため、不渡手形50万5千円が回収不能となった。なお、貸倒引当金の残高は40万円である。
- [決算申告]メニュー →[振替伝票]を開きます。
- 「発生日」に手形が不渡りになった日付を入力し、[日常仕訳]を選択します。
-
勘定科目や金額などを以下の表のように入力します。なお、2行目は[+行を追加]をクリックすると追加できます。
項目名 借方 貸方 勘定科目(1行目) 貸倒引当金(売)
※貸倒引当金には「貸倒引当金(他)」と「貸倒引当金(投)」がありますが、売上げ代金として手形を受け取っていた場合は「貸倒引当金(売)」を入力します。
不渡手形 税区分(1行目) 対象外 対象外 金額(1行目) 400,000
505,000 取引先・品目・部門・メモタグ・セグメント(1行目)
※セグメントは法人アドバンスプラン以上(または旧プロフェッショナルプラン以上)でのみ利用できます。- 取引先:A社 備考(1行目) - -
勘定科目(2行目) 貸倒損失(販)
※貸倒損失を販売管理費として計上する場合は「貸倒損失(販)」、営業外費用として計上する場合は「貸倒損失(外)」を入力します。
- 税区分(2行目) 課税売倒10%
※軽減税率の対象となる課税売上の場合は「課税売倒8%(軽)」を入力します。
- 金額(2行目) 105,000 - 取引先・品目・部門・メモタグ・セグメント(2行目) - - 備考(2行目) - -
- 各項目の入力が完了したら[登録]をクリックします。
不渡手形を回収できた場合
不渡手形を回収できた場合、以下のように記帳します。
例:A社に対する不渡手形50万5千円を回収した。なお、延滞利息600円と併せて現金で受け取った。
- [決算申告]メニュー →[振替伝票]を開きます。
- 「発生日」に手形を回収した日付を入力し、[日常仕訳]を選択します。
-
勘定科目や金額などを以下の表のように入力します。なお、2行目は[+行を追加]をクリックすると追加できます。
項目名 借方 貸方 勘定科目(1行目) 現金
不渡手形 税区分(1行目) 対象外 対象外 金額(1行目) 505,600
※不渡分+利息分の金額を入力します。
505,000 取引先・品目・部門・メモタグ・セグメント(1行目)
※セグメントは法人アドバンスプラン以上(または旧プロフェッショナルプラン以上)でのみ利用できます。- 取引先:A社 備考(1行目) - -
勘定科目(2行目) -
受取利息 税区分(2行目) -
非課売上 金額(2行目) - 600 取引先・品目・部門・メモタグ・セグメント(2行目) - 品目:延滞利息 備考(2行目) - - - 各項目の入力が完了したら[登録]をクリックします。
参考:電子記録債権の取り扱いについて
電子記録債権(電債/でんさい)は、手形・売掛債権の問題点を克服した金銭債権です。
詳細は、「電子記録債権とは」をご覧ください。
電子記録債権の会計処理は、手形債権に準じて同様の取り扱いとなります。
電子記録債権・債務の重要性が高ければ別掲する必要があると考えられますが、重要性が乏しい場合には、電子記録債権・債務を区分掲記ではなく「受取手形」(又は「支払手形」)に含めて表示することができます。