freeeではNPO法人の会計をサポートするツールとして「NPOキット」を提供しています。 本ページでは、NPOキットを利用する場合の日々の記帳方法とチェックの仕方についてご案内します。
本ガイドは、以前「NPOキット」のZIPファイルに同梱されていたPDF版「NPO法人用 会計freeeの使い方ガイド(4.NPO_guide_Ver.5)」を改訂した最新版です。
「1.概要」「2.初期設定」「3.記帳」「4-1.決算(事前準備編)」「4-2.決算(決算書作成編)」の5ページに分かれていますので、順番にお読みください。
freee会計の用語と基本的な記帳方法
freee会計を初めて使う方のために、最低限知っておきたい用語と基本的な記帳方法を簡単にご紹介します。
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口座
一般的に「口座」といえば銀行口座を指しますが、freeeでは「事業所内にある現金・小口現金」「事業用のクレジットカード」なども口座と呼びます。
口座は「お金が出入りする出入口」または「資産や負債の残高を管理するための箱」と捉えることができます。
事業に関わるお金の動きの多くは、「ある口座に対して、何らかの名目で入金や出金があった」という形で記録できます(名目を示すものが勘定科目です)。 -
取引
事業に関わるお金の動き、つまり、収入や支出を記録する最も基本的な形式です。
「借方/貸方」という仕訳で入力するのではなく、「口座」に対して「どんな名目で入金や出金があったか」という形で入力します。 -
口座振替(資金移動)
「口座」から「口座」へお金が移動したことを記録するための形式です。
例として、「事業用の銀行口座Aから銀行口座Bにお金を移した」「銀行口座から現金を引き出した」「現金を銀行口座に預け入れた」「クレジットカードの利用額が銀行口座から引き落とされた」などが口座振替に当たります。 -
消込(決済の登録)
「取引」を登録する際、当日にお金を受け取った・支払った場合は「決済が完了している」と捉えますが、翌月など後日にお金を受け取る・支払う場合は「未決済(入金予定・支払予定)の取引」として登録します。
この「未決済の取引」に対して、実際に入金や支払いが行われた日に「決済済み」にする処理を消込といいます。freeeでは消込のことを「決済の登録」「決済を登録する」とも表現します。
より詳しくは「未決済取引を消込する(売掛金の入金・買掛金の支払いなど)」をご覧ください。 -
タグ
一般的な会計ソフトでは、勘定科目よりも細かな内容を記録し内訳を管理するために「補助科目」を用いますが、freeeでは「取引先」「品目」「部門」「メモタグ」というタグを用います。
NPO法人会計では、部門タグを「どの事業の収益・費用なのか」または「法人全体としての収益・費用なのか」を区分するために用います。
その他のタグについては自由に用いることができます。
使い分けについては「取引先・品目・部門・メモタグ・セグメント・備考を活用する」をご覧ください。
NPO法人会計の記帳のポイント
NPOキットを利用してfreee会計で記帳(取引の登録)を行う際には、下記3つのポイントを必ず守るようにしてください。
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勘定科目として、インポートしたNPO法人用の勘定科目を使用する
収益や費用の勘定科目には、必ず【事】や【管】が頭に付いた勘定科目を使います。
デフォルトで存在している一般用の勘定科目を使ってしまうと、決算書作成の際に決算テンプレートで正しく集計できなくなります。 -
部門タグとして、該当する事業の部門または管理部門を付ける
収益や費用の勘定科目には、「どの事業の収益・費用なのか」または「法人全体としての収益・費用なのか」を示す部門タグを必ず付けます。
部門タグを付け忘れると、決算テンプレートで正しく集計できなくなります。 -
勘定科目と部門の組み合わせが正しいか確認する
【事】で始まる勘定科目には「◯◯事業」、【管】で始まる勘定科目には「管理部門」(※)の部門タグを選択するようにご注意ください。
勘定科目と部門の組み合わせが誤っていると、決算テンプレートで正しく集計できなくなります。
※ Nportを利用する場合、按分の対象にしたい共通経費の勘定科目には「管理部門」に代えて「共通部門」を選択します。
なお、NPOキットの古いバージョンでは、収益や費用の勘定科目の一部に【事】・【管】が付いていないものがありました。
最新版の勘定科目セットをインポートするか、勘定科目を個別に編集してお使いください。
取引の登録例
例1:「正会員であるA株式会社より5万円の会費を受け取った」
勘定科目は「【管】正会員受取会費」、部門は「管理部門」を選択します。
「【管】正会員受取会費」はショートカットが「600」に設定されていますので、勘定科目の欄で「600」と入力するか、「会費」のように勘定科目の一部を入力すると、表示される候補から選択できます。
例2:「B事業の運営を担当する職員に給料を支払った」
勘定科目は「【事】給料手当」、部門は「B事業」を選択します。
「【事】給料手当」はショートカットが「701」に設定されていますので、勘定科目の欄で「701」と入力するか、「給料」のように勘定科目の一部を入力すると、表示される候補から選択できます。
例3:「NPO法人全体の管理・運営を担当する職員に給料を支払った」
勘定科目は「【管】給料手当」、部門は「管理部門」を選択します。
「【管】給料手当」はショートカットが「801」に設定されていますので、勘定科目の欄で「801」と入力するか、「給料」のように勘定科目の一部を入力すると、表示される候補から選択できます。
取引の登録例では、[取引入力]メニュー →[収入・支出形式(取引の一覧・登録)]から手入力で取引を登録する方法を紹介していますが、より効率的で記帳漏れが生じにくい方法として「自動で経理」や「ファイルボックス」からも取引の登録が可能です。
基本的な入力項目や考え方は同じですので、勘定科目や部門に注意しながら、ぜひ便利に活用してみてください。
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自動で経理
銀行口座やクレジットカードと連携して入出金明細を取得し、その明細をもとに取引を登録できます。
よくある入金や支払いについて「自動登録ルール」を設定することで、任意の勘定科目と部門を付けて自動的に取引を登録することも可能です。
詳細は「自動で経理の使い方(明細を元にした帳簿付け)」をご覧ください。 -
ファイルボックス
スマートフォンでレシートを撮影したりスキャナで書類を読み込んだりして、そのファイルの文字情報をもとに取引を登録できます。
取引と紐付ける形で書類を保管でき、いつでも確認できるのもメリットです。
詳細は「取り込んだレシート類を帳簿付けする」をご覧ください。
記帳内容のチェック
記帳にミスはつきものです。
決算時に限らず、日々の記帳を進めながらときどき振り返って、正しく記帳できているか確認することをオススメします。
ここでは、freee会計の機能を使った簡単なチェック方法をご紹介します。
試算表のチェック
損益計算書:勘定科目と部門の組み合わせは正しいか
[会計帳簿]メニュー →[試算表]を開くと、「損益計算書」を確認できます。
損益計算書は収益や費用の勘定科目ごとの合計を示したもので、決算時に作成する「活動計算書」や「事業別損益の状況」に反映されることになります。
NPOキット(またはNport)を利用する場合、事業費と管理費を区分して集計するため、事業費に属する勘定科目は「当期商品仕入」、管理費に属する勘定科目は「販売管理費」のカテゴリーに表示されるようになっています。
【損益計算書の見方】
勘定科目の左には右向きの三角マーク(▶)があり、クリックすると取引先別・品目別・部門別の内訳を見られます。
勘定科目や内訳ごとの金額をクリックすると、画面右側に一覧が表示され、その数字の元となっている取引などを確認できます。
【チェックのポイント】
基本的に、損益計算書の勘定科目にはすべて【事】か【管】が付いている必要があります。
また、【事】の勘定科目には「◯◯事業」という部門が、【管】の勘定科目には「管理部門」という部門が付いている状態が適切です。
もし次のようなものが損益計算書に載っていたら、決算テンプレートに金額が正しく反映されませんので、修正が必要です。
- 【事】・【管】が付かない「給料手当」「支払手数料」のような一般用の勘定科目がある
- 部門別の内訳に「未選択」がある
- 【事】の勘定科目に部門として「管理部門」が付いている
- 【管】の勘定科目に部門として「◯◯事業」が付いている
画面上部にある絞り込み機能を活用すれば、このようなミスを見つけ出すことができます。
【絞り込み機能で漏れなくチェック】
- 損益計算書を見渡して、【事】・【管】が付いていない勘定科目がないか確認します。
右向きの三角マーク(▶)が付いている項目で、「期末」の残高がゼロでないものについては修正が必要です。
金額をクリックし、元となっている取引を開いて勘定科目を修正してください。
※ 「減価償却費」については「減価償却費の仕訳はどうしたらいいですか?」をご覧ください。
- 検索条件の「部門」欄で「未選択」を指定して絞り込みます。
もし何かの勘定科目が表示されたら、元となっている取引を開いて適切な部門を付けてください。
- 画面上部で絞り込む
- 部門が「未選択」のものが見つかった(わかりやすいよう内訳を展開しています)
- 画面上部で絞り込む
- 検索条件の「部門」欄で「管理部門」を指定して絞り込みます。
もし【事】で始まる勘定科目が混ざっていたら、【管】で始まる勘定科目に修正するか、部門を「◯◯事業」に修正してください。- 画面上部で絞り込む
- 「管理部門」の中に【事】の勘定科目が見つかった(わかりやすいよう内訳を展開しています)
- 画面上部で絞り込む
- 検索条件の「部門」欄で「◯◯事業」を指定して絞り込みます。
もし【管】で始まる勘定科目が混ざっていたら、【事】で始まる勘定科目に修正するか、部門を「管理部門」に修正してください。
※ 事業部門の数だけ繰り返し行います。
- 画面上部で絞り込む
- 「◯◯事業」の中に【管】の勘定科目が見つかった(わかりやすいよう内訳を展開しています)
- 画面上部で絞り込む
貸借対照表:期末残高にマイナスや内容不明のものはないか
試算表の画面でタブを切り替えると「貸借対照表」を確認できます。
貸借対照表では、資産と負債・正味財産の残高がこの一年でどう変化したかを見ることができます。
【チェックのポイント】
期末の残高に注目して、現金や銀行口座の残高が実残高と合っているか、マイナスになっている勘定科目がないか、チェックしましょう。
マイナスかどうかだけでなく「これは何だろう?」と思うような勘定科目や金額があれば、クリックして中身を確認し、必要に応じて修正してください。
上図では、例として次のようなミスを示しています。
- 「現金」の残高が合っていない(マイナスになっている)
- 「仮払金」という不明な勘定科目の残高がある(仮に登録したままだった)
- 固定資産の「工具器具備品」がマイナスになっている(購入したときの取引が登録されていない)
なお、現金や銀行口座の残高が正しくない場合は、「現預金レポート」や「タイムライン」を利用して修正します。
詳しくは「残高ズレをチェックして修正する」をご覧ください。
月次推移のチェック
「月次推移」は試算表を月ごとに分けて表示したレポートで、とくに月々の損益について記帳ミスがないかをチェックするのに向いています。
[会計帳簿]メニュー →[損益計算書(月次)]を見渡してみましょう。
【チェックのポイント】
収益や費用の金額が他の月より明らかに突出している月、ゼロになっている月などがあったら、実際はどうだったかを確認し、修正します。
目に留まった月の方が正しく、他の月が間違っている可能性もあります。
また、たとえば「【管】地代家賃」とすべきところを「【事】地代家賃」と入力してしまったなど、事業費と管理費の選択ミスによって本来の金額と異なっていることもありえます。
金額が正しくないように見える場合は、【事】・【管】のもう一方の勘定科目も確認しましょう。
上図では、例として次のようなミスを示しています。
- 6月だけ「【管】法定福利費」が大きい(6月が正しく、他の月が小さすぎるのかもしれない)
- 8月の「【管】消耗品費」が突出して大きい(勘定科目や金額を誤っていたかもしれない)
- 6月の「【管】地代家賃」が抜けている(「【事】地代家賃」で登録していたかもしれない)
取引の登録に関するよくある質問
以下のような質問については「NPOキット:よくある質問」にまとめています。
- 質問1:「【事】と【管】のどちらを選べばいい?」
- 質問2:「減価償却費の仕訳はどうしたらいい?」
- 質問3:「消費税の免税事業者ですが『適格請求書等』のチェックは必要ですか?」