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質問1:【事】と【管】のどちらを選べばいいですか?
NPO法人会計では、かかった費用を「事業費」と「管理費」の2種類に分けて集計・報告する必要があります。
それぞれの違いは下記のとおりです。
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事業費
NPO法人が事業を行うために直接要した人件費やその他の経費のこと。
具体的には、ある特定の事業を運営・遂行してくれる人に支払った給料、ある事業のために作ったポスターの制作費などが該当します。
明らかに「この事業に利用した」と特定できるものが事業費となります。 -
管理費
NPO法人の全体を管理・運営するための費用のこと。
具体的には、理事会の開催運営費用、ホームページの更新費用、理事への給料などが該当します。
NPOキット(およびNport)では、勘定科目の頭に【事】と【管】を付けることで、事業費と管理費を区別しています。
事業費に分類される費用を支出したときは【事】で始まる勘定科目を入力し、管理費に分類される費用を支出したときは【管】で始まる勘定科目を入力します。
事業費と管理費のどちらか一方と判断できないものや、2つ以上の事業にまたがる事業費については、決算時に「按分」という処理をすることで、各事業部門および管理部門に所定の比率で分配します。
按分の対象となる費用の例としては、人件費、地代家賃、水道光熱費、減価償却費などがあります。
そのような費用については、【管】で始まる勘定科目を入力し、部門は「管理部門」を選択します(Nportを利用する場合は「共通部門」を選択します)。
決算時に行う按分の処理について、具体的には「4-2.決算(決算書作成編)」の「共通経費の按分」をご覧ください。
質問2:減価償却費の仕訳はどうしたらいいですか?
高額(一般的な基準は、10万円以上)で1年以上使用するものを購入・取得したときは、全額をそのまま費用とするのではなく固定資産として計上し、減価償却という処理を行って、複数年度にわたり「減価償却費」として徐々に費用計上していきます。
この減価償却費についても、事業費と管理費のどちらかに分類する必要があります。
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特定の事業のみで使用する固定資産
勘定科目「【事】減価償却費」、部門「◯◯事業」として計上します。 -
法人全体または複数の事業で使用する固定資産
勘定科目「【管】減価償却費」、部門「管理部門」(Nportで按分する場合は「共通部門」)として計上します。
freee会計では、「固定資産台帳」に固定資産の情報を登録すると、減価償却費の仕訳が自動的に作成されます。
その際に用いる減価償却費の勘定科目と部門は資産ごとに変更可能ですが、デフォルトでは一般用の「減価償却費」となります。
そのままでは決算テンプレートで正しく集計できないため、以下のA・Bいずれかの方法で事業費または管理費として計上する必要があります。
A.固定資産の登録時に適切に設定する(オススメ)
固定資産の登録画面に「減価償却に使う勘定科目」と「部門」を選択する欄があります。
その固定資産に合わせて適切に設定しておけば、自動的に正しい減価償却費の仕訳が作成されます。
※ 詳しくは「【法人】固定資産を登録する(固定資産台帳)」と「【法人】減価償却費を計上する勘定科目を変更する」をご覧ください。
B.振替伝票で【事】・【管】の減価償却費に振り替える
固定資産の登録時に勘定科目や部門を選択していなかった場合、部門なしの勘定科目「減価償却費」が計上されます。
この減価償却費の金額を確認し、「【事】減価償却費」または「【管】減価償却費」に振り替えます。
振替伝票を用いて減価償却費を振り替える手順は、以下のとおりです。
- [会計帳簿]メニュー →[総勘定元帳]にて、「減価償却費」の残高を確認します。
- [取引入力]メニュー →[振替伝票]より、借方(左側)に勘定科目「【事】減価償却費」または「【管】減価償却費」と入力、貸方(右側)に「減価償却費」と入力し、①で確認した金額を入力します。
借方(左側)には勘定科目に合わせた部門タグも忘れずに付けて、振替伝票を登録します。
【固定資産を複数の事業で使用している(決算時に按分する)場合の入力例】- 発生日:期末日
- 借方勘定科目:【管】減価償却費
- 借方部門:管理部門
- 貸方勘定科目:減価償却費
- 貸方部門:なし
- 借方・貸方金額:①で確認した金額
- 借方・貸方税区分:対象外
- [会計帳簿]メニュー →[総勘定元帳]にて、「減価償却費」の残高がゼロになっていることを確認します。
質問3:消費税の免税事業者ですが『適格請求書等』のチェックは必要ですか?
取引の登録画面に表示される「適格請求書等」または「適格」のチェック項目は、インボイス制度の買い手側対応のために存在するもので、免税事業者の方には基本的に不要です。
[マスタ・口座]メニュー →[税区分]から「買い手側対応機能」を「使用しない」に変更すると、このチェック項目は表示されなくなります。
詳しくは「インボイス制度買い手側関連の設定を行う - 買い手側対応機能の設定」をご覧ください。
質問4:部門タグの付け忘れを防ぐ方法はありませんか?
収益や費用の取引を登録するときは、【事】または【管】が付いた勘定科目を使い、それに合った部門タグとして「◯◯事業」または「管理部門」を付ける必要があります。
ただ、入力の際にタグを付け忘れたり、【事】の勘定科目に「管理部門」を付けてしまったりという間違いはどうしても起こりがちです。
このような入力段階でのミスを防ぐ工夫として、取引テンプレートを活用する方法があります。
取引テンプレートは、複数行からなる取引や毎回決まったタグを付ける取引など、定型的な取引の入力を楽にするための機能です。
取引テンプレートを使うと、勘定科目やタグを毎回入力することなく、たとえば発生日と金額を入力するだけで完全な取引を登録できるようになります。
また、複数名で記帳を行う場合でも、入力内容を統一できます。
取引テンプレートは、一度登録した取引を元に作成するのが簡単でオススメです。
- 取引の一覧画面で、登録した取引をクリックして開き、[取引テンプレートとして登録]をクリックします。
- 「テンプレート名」にわかりやすい名前を入力して保存します。
この画面で不要なタグを消去したり、さらに追加したりすることも可能です。
金額は、毎回同額の場合はそのまま残し、異なる場合は消去してゼロにしておきます。 - 取引を登録する際、取引テンプレートの欄から使用したいものを選択すると、保存した入力内容が呼び出されます。
取引テンプレートを編集・削除したいときは、[入力効率化]メニュー →[取引テンプレート]から行います。
詳しくは「取引のひな型を作成する(取引テンプレート)」をご覧ください。
質問5:減価償却費以外に注意が必要な勘定科目はありますか?
一般に銀行の振込手数料などについて「支払手数料」という勘定科目を使いますが、NPO法人会計ではやはり事業費か管理費かを考えて「【事】支払手数料」または「【管】支払手数料」の勘定科目を使い、それに合った部門タグも付けます。
freee会計では、口座振替(資金移動)を登録する際や、未決済取引(入金予定・支払予定の取引)に対して決済の登録を行う際に、手数料の入力を省略できる機能があります。
これによって【事】や【管】が付かない一般用の「支払手数料」が意図せず発生してしまうことがあるため、注意が必要です。
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口座振替(資金移動)にともなう手数料
「手数料」欄に金額を入力するだけだと、部門なしの「支払手数料」として計上されてしまいます。
ATM手数料や振込手数料などがかかった場合は、詳細登録画面の[手数料を追加]ボタンから適切な勘定科目と部門を入力してください。 -
決済の登録にともなう手数料
未決済取引に対して手動で決済を登録する際、支出取引の決済残額を上回る金額を入力する、または、収入取引の決済残額を下回る金額を入力すると、差額が部門なしの「支払手数料」として計上されてしまいます。
実際に手数料の分で差額が生じた場合、決済残額のとおりに決済を登録してから、別途、手動で差額分の支出取引を登録してください。
※ 口座を同期している場合、自動で経理の「未決済取引の消込」では[差額を調整]から任意の勘定科目と部門を入力できます。